いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 甘薯農園蔵元 鹿吉

 甘薯は1597年に唐から宮古島へと伝わってきたそうです。その後琉球を経て薩摩に伝わったことから、からいも、りゅうきゅういも、さつまいもなどと呼ばれています。やせた土地でも育ち、自然災害にも強いため、飢饉や災害に備える救荒作物として広まりました。近年は品種改良が進んで食味が良くなったこともあり、江戸、明治、戦後に続く、平成の第4次焼き芋ブームが起こり、それは今なお継続中とのこと。お米がない時の代替食というイメージから健康に良いナチュラルスイーツへと、さつまいもへの認識は大きく変化しました。

 全国のさつまいもの生産量は例年鹿児島県が1位ですが、その8割以上はでん粉や焼酎の原料に使われています。次いで2位の茨城県の場合は、用途の9割以上が食用です。青果としてのさつまいもに関しては茨城県がトップと言えるでしょう。それは量に限ったことでなく、栽培、貯蔵、加工においても独自の技術を開発し、全国に先駆けた展開をしています。

 日々、食べておいしいさつまいも作りに精を出している茨城の生産者の皆さん。なかでも、こだわりの栽培方法で「シルクスイート」という品種に特化して生産している「鹿吉」では、農園内の直売所に”鹿吉の焼き芋”を求めにくる人が絶え間なく訪れる姿が見られます。

さつまいも一筋、鹿吉のあゆみ

−まずは御社の歴史と現況を教えてください。

吉田さん さつまいもの栽培は祖父の代から始まりました。当時は付近にでん粉工場がたくさんあり、その原料用の芋を作っていました。食用はわずかに干し芋を作っていたくらいです。父親の代で加工用から食用へと業態を切り替えました。それと同時に親戚や友人らと組合を作り、さつまいもがあまり採れない東北方面の市場、新潟、岩手、宮城などに出荷をしてきました。

 さつまいもを収穫したら、翌年の苗にするための種芋を残しておきます。ある年に種芋がだいぶ余ってしまい、4月頃にそれを築地市場に出荷したところ、「なぜ今の季節にさつまいもがあるのか。しかもすごく甘い!」と驚かれました。

 当時茨城県が推進していたプロジェクトで、キュアリング(※)という種芋の保管方法を行なっていたのですが、その貯蔵法によってでん粉の糖化が進み、非常に甘い芋になっていたのです。当園が最初にキュアリングをしたのは昭和35年頃のことだったと思いますが、その経験が元となり、さつまいもの周年供給を行うようになり、会社が成長してきました。

 現在は約30haの畑で、年間約1000tの収穫を得ています。栽培から貯蔵、卸し、開発、加工、販売までを一貫して行い、商品は青果さつまいも、焼き芋、干し芋、大学芋、各種カット芋、ペースト類、芋けんぴ、ラングドシャなどを取り扱っています。

 

※「キュアリング」とは、土中に近い一定の温度と湿度を保った環境に収穫後のさつまいもを貯蔵し、表皮の下にコルク層(かさぶた)を作り、収穫の際についた表面の細かい傷を治癒させる処理。これにより長期保存が可能となる。また、傷の治癒と同時にでん粉が糖化する速度を高める効果もあり、時間経過に伴い新芋よりも甘味が増す。

のど越しよく軽やかに食べきれる焼き芋

−平成から続く焼き芋ブーム。その人気はさつまいもの品種改良によるところが大きいと言われています。最近ではねっとりとした質感で甘味のつよい「べにはるか」が主流のようですが、御社では「シルクスイート」を選択されています。その理由とは?

吉田さん 焼き芋を始めた当初は、芋のおいしさを最大限に引き出すために壺焼きで作っていました。壺焼きは鹿吉の伝統。今もその味を再現する製造法をしています。壺焼きは直火に燻されることで風味が増し、遠赤外線効果によってふっくらと焼きあがります。

 その頃は「ベニアズマ」「ベニハルカ」「シルクスイート」、3種類の芋を使っていましたが、私自身はほくほく系ながら壺で焼くとしっとり感も出る「ベニアズマ」が好みでした。芋っぽい質感がしっかり感じられて、甘すぎないところが良いのです。若い方たちにはねっとり柔らかく甘味のつよい「ベニハルカ」が人気でした。

 「シルクスイート」は繊維質が非常に細かい品種で、名前の通りシルクのようになめらかな食感が特徴です。のどの通りが良く年配の方からは特に好評でしたが、ある闘病中の方の「他の芋は食べられないが、この芋はすーっと入ってくれる」という言葉が決め手になりました。ただ甘いだけのものは1つでも持て余すことがありますが、程よい甘さで、程よい芋感がある「シルクスイート」なら、また食べたいと思っていただける焼き芋ができる。鹿吉の焼き芋はこれでいこうと決めました。
 

 また、その頃オーガニックとか無農薬野菜といったワードがよく聞かれ、社会全体に健康志向、自然思考が高まっているのを感じていました。さつまいもは準完全食品と言われるほど栄養バランスが良く、タンパク質と脂質を足せば完全食になります。セルロースやペクチンといった食物繊維も非常に多く含まれています。この健康に良い食品を、せっかくなら正真正銘健康に良い状態で、社会の役に立つ商品にして提供したいというテーマが見えてきて、そのテーマの実現にも「シルクスイート」が最適でした。

 

人に、社会に、未来に、貢献できる農業

−真に健康に寄与するさつまいもを作るために、どのような工夫をされていますか?

吉田さん 当園では沖縄県与那国島産の化石サンゴを使用して土作りをしています。地殻変動により隆起して地表に現れた化石化したサンゴは、多孔質な構造で、土中の微生物の良い住みかとなり、土を元気にしてくれます。また、人体に必要な必須ミネラル16種類を含む、70種類以上の海洋ミネラルを保有し、化石サンゴそのものが栄養機能食品として活用されているものです。

 「シルクスイート」はさつまいもの中でも繊維が最も細かく、体内で分解されやすい品種。化石サンゴが保有するミネラルや良質な食物繊維をたっぷり含んだ「シルクスイート」を作ることによって、それらが効率よく人の体に栄養として吸収されます。

 収穫後はキュアリング貯蔵です。当園では1年間保存できる貯蔵庫を芋蔵と呼んでいます。社名の前に「甘薯農園蔵元」と書かせていただくこともあり、芋蔵は弊社の味を支える重要なポイントです。ここで温度と湿度をコントロールしながら、最低でも1ヶ月程度寝かせ、でん粉の糖化促進をさせたものを商品としてご提供しています。

 その際の貯蔵管理時の加湿や、育苗ハウスでの灌水、芋の洗浄などにはナノ水を使用しています。地下水を濾過して不純物を取り除き、活性酸素を除去。ナノ精製機にて水の分子を細かくした水を使用することで、よりミネラル成分を多く保有した芋に仕上がり、芋の切り口などへの殺菌効果も期待できます。
 

−最後に、これからのことについて教えてください。

吉田さん 現在はさまざまな他の食品業種の方と協力しながら、さつまいもの新しい活用法の開発を進めています。また収穫した後の芋を貯蔵庫内で、より高い価値を付加できないかという観点で試験を行なったりもしています。その延長線上に、最終的には環境改善につながるようなことができればというのが理想です。

 もう1つは農業の後継者育成についての展望です。若者の農業離れの気持ちは理解できます。私自身、子供の頃は家が農家であることがコンプレックスで、いつも仕事に追われている暮らしが嫌でしたから。その固定観念を変えたのが、23歳の時に農業視察でアメリカに行った経験です。大規模な農業を目の当たりにし、ホームステイも経験しました。向こうでは農業を会社として組織し、プライベートでは自分たちの暮らしもしっかりと楽しんでいました。なぜこんなに違うんだ!とカルチャーショックを受けて、そこからいろいろと仕事の仕方を変えてきました。

 そうしたこれまでの経験や技術的なノウハウを後輩に伝えたり、農業に就きたいけれども地盤がなくて困っている方を、後継者のいない農家に繋ぐなどのサポートをしていきたいと考えています。

 

 

【取材録】

農業を企業として運営する。そのためのセルフプロデュースや商品のブランディングにも力を入れている吉田社長です。同時に、農業=大地から物を生み出す神聖な仕事という意義に向き合う精神性もたいせつにされています。苗の植え方ひとつでも収量や品質に差が出ると、1本1本注意深く”心を込めて”手作業で定植しているそうです。システマチックでありながら、職人のような個が極める技術、探究心、心意気といったこともたいせつにしたい。そしてどちらの側面からも、目指すところは正真正銘、健康に良いものだけを届けたいという思いに、鹿吉イズムが感じられました。

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