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 東京発電株式会社は、文字通り、発電および電気の販売を主たる事業とする会社です。1928年の設立以来90年以上に渡って取り組み続ける水力発電をはじめ、風力発電や木質バイオマス発電など、クリーンエネルギー、再生可能エネルギー事業に特化した環境にやさしい発電のプロとして、よりいっそう豊かで持続可能な社会をつくることを目指しています。

 その東京発電が、茨城県の県北地域で新規就農を果たし、さつまいもづくりに取り組んでいるとか。発電とさつまいも?──いったい両者にどのような関係性が?!

 さっそく東京発電の茨城事業所を訪ね、事業開発部 事業企画グループマネージャーの池﨑信二郎さんに話を伺ってきました。

 

流域コミュニティのお困りごとが就農のきっかけに。

 

──会社の事業としてさつまいもづくりを始められたと伺いました。

池﨑さん

 はい。2023年7月に会社内に新規事業を担当する部署が発足しまして、その最初の事業として茨城での営農に着手しました。 

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──なぜ発電会社が農業を始めることになったのでしょう?

池﨑さん:

 唐突に思えますよね(笑)。でも、じつは、私たちの発電事業とさつまいもづくりには深い関係があります。東京発電の主軸事業である水力発電では、ご承知の通り河川の水を利用した施設を使います。そのため、河川の流域に住む方々のご協力が不可欠なんです。たとえば、川の水の取入れ口にゴミがたまっていないかとか、流域に何か通常とは異なる事態が起きていないかなどを日常的にモニターしていただいているんですね。

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 そういった流域に住む方々──「流域コミュニティ」と呼ばせていただきますが──茨城県北の流域コミュニティの皆さまと交流させていただいているうちに、皆さまのお困りごとについてもお話を聞くようになったんです。そして、多くの方々が高齢化によって農業を続けられない現状を知った。それならば、私たちがその土地を利用させていただき何か始めよう、と考えたわけです。当初は、農業に限らず何か地域のためになることを、という考えだったのですが、農業の継続とこの景観を大切にされていることを強く感じました。 であるならば、私たちの手で、農地をそのまま農地として使わせていただくのがよいのでは、ということになったんです。

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──これまでに農業のご経験は?

池﨑さん:

 まったくありません(笑)、個人としても、会社としても。ですから、いざやるとなると、「農業を甘く見ないでほしい」というような手厳しいご意見もたくさんいただきました。けれど、もともと私たち東京発電には、大きな資本を投入して一気に事業を行うというよりも、自分たちでまず汗をかきながら挑戦してみる、という文化がありまして。地域の皆さまや農業委員会の皆さまに指導を仰ぎながら、さつまいもの苗を植え始めたのが、2024年の4月です。

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人手が足りない日は、他県の営業所からも応援部隊が。

 
──さつまいもを選んだ理由は?

池﨑さん:

 今、私は東京本社と日立市にある茨城事業所を行ったりきたりする生活をしていますが、もともと水戸出身でして、茨城事業所を訪ねるたびに、そういえば昔、地元で生産される干し芋が大好きだったなぁと思い出していたんです。それで、茨城事業所のスタッフたちとも相談して、さつまいもを始めてみることにしました。茨城県を代表する野菜のひとつですからね。私たちが農業に取り組む理由として、地域のお困りごとの解決が目的のひとつですが、さらに、収穫した農作物を利用して地域コミュニティの活性化をはかれたら、という想いもあるんです。その意味でもさつまいもは、干し芋や、近年人気を集めている焼き芋などに加工ができ、イベントなどとの相性もよいので、いろいろな可能性を試せるように思えたんです。品種としては、「紅はるか」「紅あずま」「シルクスイート」の3品種を選びました。

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──すでに1回目の収穫を始められているようですが、初めての農業への挑戦はいかがでしたか?

池﨑さん:

 それはもうね、想像以上に大変でした。もちろん、私たちの誰も簡単にできるとは思っていませんでしたが、夏の酷暑の中での雑草との闘いは本当に厳しかったです。農地に雑草が目立つ状態になれば、やはり地域の皆さまからのご指摘も受けますしね。土地を使わせていただく立場としては、できる限りよい状態を保っておきたい。しかし雑草の勢いは凄まじく、弱音を吐きそうにもなりました。ですが、先ほどもお伝えした通り、東京発電という会社には自分たちの手でチャレンジして問題を解決していく社風がある。人手が足りないときは、他県の事業所に応援依頼をすると、時間の都合がつく人が自主的に作業を手伝いに来てくれるんです。

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──会社の業務の一環として応援に来てくれるんですね?

池﨑さん:

 そうなんです。たとえば、私たちが、「〇月△日にこういう作業を予定していますが、何人ほど人手が足りません」とメッセージを発すると、他県で発電のエンジニアリングに携わる専門技術者などでも、時間の都合がつけば手を挙げて来てくれるんです。もちろん皆、農業については素人ですけれど、茨城事業所のスタッフたちから説明を受けながら、懸命に汗を流して作業してくれます。茨城事業所のスタッフたちは、さつまいもづくりをやると決めたときから自らいろいろと勉強したり技術を磨いたりして、今やトラクターや収穫機をプロ並みに操縦できる人もいますから。無事に収穫までたどり着けたのは、茨城事業所のスタッフの熱意も大きかったと感じています。

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地域の皆さんが笑顔になる機会をひとつでも多く。

 
──収穫したさつまいもの評価はいかがですか?

池﨑さん:

 1年目にしては上々だと感じています。もちろん、畑の環境によって出来が今ひとつだったものや形が悪かったものがないわけではありませんが、1年目にして常陸太田市の道の駅に出荷させていただいたり、加工製品会社さんに買い取っていただいたりしているので、合格点かと。社内販売についても、もっと欲しいという声が出ているくらいですので。やはり、おいしい!という声を聞けると何よりも嬉しい気持ちになりますね。

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──今後の目標について教えてください。

池﨑さん:

 初年度として「紅はるか」「紅あずま」「シルクスイート」の3種類を育て、植え方も2種類を試しました。それぞれ土壌のデータと気象データ、生育データを収集しましたので、それらを分析して、次の1年ではそこから得た情報をしっかり生かしてよりおいしいさつまいもを育てたいと思っています。データ収集と分析こそ、私たちがもっとも得意とする分野ですので、そこを強みとしていきたい。加えて、2年目は、よりよい苗を入手する準備も怠らないようにしたいと思っています。1年目は慌ただしく準備する中でなんとか調達したという感じでしたから。そして、今後はさらに出荷先を広げる努力をしながら、加工品をつくってイベントなどへの出店も増やしていけたらと思っています。じつは先日、日立駅前で開催されたイベントにお誘いをいただきまして、遠赤外線焼き芋機を調達して初めて焼き芋販売で参加したんです。これが大変好評をいただきまして。作るのに時間はかかるのですが、その分、遠赤外線効果で中はホクホクに、甘みも増して非常においしくなります。お買い求めいただいた皆さまの笑顔が私たちには本当に嬉しかったですね。自分たちの手がけたもので地域の多くの皆さまが笑顔になるような機会をひとつでも多くつくっていけたらと強く思いました。

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 1年目を終えて、「AQUA FARM」というブランド名とロゴも決まりました。「AQUA FARM」という名前には、大切な環境資源である水への敬意と、その水が 育む作物と新しいコミュニティづくりへの私たちの想いを込めています。今後はさらに、多くの皆さまに私たちのさつまいもについて知っていただけるよう、スタッフ皆で知恵と力を合わせていきます。

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【取材録】

東京発電とさつまいもとの不思議な関係は、じつは、地域の環境資源を利用した再生可能エネルギー事業を行う会社ならではの発想から生まれた、必然の“甘イイ” 関係なのでした。

池﨑さんの言葉からは終始、地域と同じ目線に立ち、地域コミュニティの活性化になんとか役立とうとする、純粋な情熱と強い信念が感じられたことが印象に残ります。東京発電の皆さんの想いが詰まった「AQUA FARM」のさつまいも、店頭やイベントで目にしたら、皆さまもぜひ一度手にとって味わってみてください。

■東京発電株式会社
https://tokyohatsuden.co.jp/

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