いばらきの生産者

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見た目は一般的な落花生。ところが殻を割ってびっくり!薄皮が真っ黒の「黒落花生」です。香ばしく濃厚な風味、上品な甘さは、食べ出すとつい手が止まらなくなる魅惑的な美味しさです。
 全国でも生産農家の少ない希少な黒落花生を作っているのが、牛久市女化(おなばけ)町にある「澤田茶園」です。こちらでは、茶葉と落花生の生産・販売をはじめ、雑穀などの健康に役立つ自社商品を数多く手掛けています。商品が定番として店頭に並ぶまでには、その何倍もの種類を何年もかけて試作することが必要で、黒落花生もその中の一つでした。そこには澤田茶園4代目・澤田臣男さんの真っすぐな情熱とあくなき挑戦がありました。

手入れの行き届いた青々と美しい茶畑、その奥に広がる落花生畑

−お茶と落花生の組み合わせは珍しいですよね。創業当初からそうだったのですか?

澤田さん そうですね、お茶を作っているのは牛久ではうちくらいですね。ここは私の曾祖父の代から昭和元年(1926年)に始めたんですが、最初は蚕の養殖もやっていて、はた織り機がたくさんありました。はた織りをしながらお茶の木を増やして、落花生問屋を始めて。その後、はた織りはやめて、お茶と落花生にして今に至るのがルーツです。お茶は主にやぶきた茶で、茶畑の広さは1町5反。落花生の種類は「ナカテユタカ」、「半立ち」、「おおまさり」、「さとのか」で、全体が4町5反くらい。そのうち、黒落花生は1町歩(4分の1)くらいかな。
 落花生に関しては、ずっと自社で生産もしていましたが、当初は焼く機械がなかったので、自分たちで作った分とこの辺りの生産者から買い取った落花生を八街(千葉県)へ売りに行っていました。

−年間通した作業面での相性はどうですか?

澤田さん 新茶の時期と落花生の種まきが少しかぶるくらいで、1年通した作業は基本的にずれます。お茶は忙しい時期が年3カ月くらいなので、落花生をやることで年間半分以上仕事がある状態になり、良い組み合わせだと思います。
 お店で扱うものは仕入れるのではなく、自分たちで作ったものを売りたいと思っているので、お茶と落花生以外にもあれもこれも作ってみようということになり、儲からないけど忙しい1年になっちゃう(笑)。毎年いろんなものを試しているけれど、作っても商品にならないもの、売れると思ってお店に出しても売れないこともあって。商売は難しいですね。

常に新しいものを、自分たちの手で

−こちらの直売所では、お茶と落花生の他にも自社生産の雑穀やハト麦茶、野菜なども売っていますよね。

澤田さん 昔から雑穀も作っていたんですが、宣伝して売るようになったのは10年くらい前からです。その前は、お店に置いても見向きもされなかった。ずっと売っているうちに、雑穀ブームがきて注目されるようになったかな。雑穀もいろんな種類を試して今の種類に落ち着きました。

−お話を伺っているとチャレンジャーなんですね!ご両親の代とあえて変えているところもあるんでしょうか。

澤田さん 自分はいろいろ試したいタイプで。飽きっぽいというのかな。ほとんどは失敗ですが、変わったことをやるのは楽しいですよね。自分がいろんな落花生を探して取り寄せているのを見て、親も協力してくれるようになりました。
 景気の良い時代からだんだん衰退していくのを見ているので、親と同じことをしていては現状維持どころか下がってしまうとずっと感じていました。特にお茶は若い人が飲まないのもあってお茶人口が減っているし、落花生も主食ではないので売れ行きはそんなによくない。落花生にしてもお茶にしても、時代のニーズに合った新しい商品を作り出していきたいと思っています。

長年の挑戦が結実

−黒落花生はいつから始められたのですか?

澤田さん 取り入れたのは5〜7年くらい前です。落花生に興味を持ってもらいたかったのと、自分でもいろんな品種を試したくて。何年も前から、毎年2、3種類を試しに作っていて、食べてはためだなの繰り返しでした。美味しいものは作るのが難しく、作りやすいものは食べても美味しくないのがほとんど。黒落花生に落ち着くまでに20種類はやったかな。味など総合的に見て、これは商品になるのでは、と思ったのが黒落花生でした。

−黒落花生は栽培が難しいと聞きますが、一般的な落花生との育て方の違いやその特徴を教えてください。

澤田さん 殻をむくと薄皮が真っ黒な点が大きな特徴ですね。この黒い薄皮にはポリフェノールの一種、アントシアニンがたっぷり含まれているので、香ばしい黒皮ごと食べていただくことをお勧めしています。落花生は基本的に薄皮ごと食べた方が健康に良いんですが、黒落花生は薄皮が喉に引っかかりにくく、味も濃いですね。
 栽培面では、黒落花生は収穫の時期が短いので、収穫の適期に気を遣います。普通の落花生は、前後合わせて10日〜2週間は大丈夫ですが、黒落花生は前後合わせて5日くらい。黒落花生は殻と実のすき間がなく、実がギッシリ詰まっているので、育ちすぎると芽が出てダメになってしまう。管理面でも干ばつに弱く、水分的なものを多く必要とするので、今年みたいに雨が少ないと水をまかないと育たない。
 自分も4、5年目でやっと安定して作れるようになりました。1年目は天候が良くてそんなに苦労なく作れて、試しに売ったらお客さんの反応もよく「これはいける」と。そこで2年目はたくさん作ったんですが、ほとんど干ばつでやられてしまい、一番大変な年でした。その次の年からは何が原因なのかを探りながらでした。うちの落花生は農薬を使わないので病気や虫もやられ放題。日照りや病気、虫対策は大変です。

自分たちにとっての当たり前が、結果、減農薬に

−農薬を使わないというのは?

澤田さん ずっと親の代から農薬を使ってなかったので、落花生は農薬を使わないで作るものだと思っていたんです。それが10年くらい前に、周りの農家仲間はみんな使っていると聞いて驚きました。親に使わない理由を聞くと、農薬をまくと仕事が間に合わない、余分な作業をする時間がなかったからと。うちは市場には出さないので、自分のところで売るなら不作なりに量が少なくてもいいやと、作業効率を考えてのことです。特に無農薬を売りにしたり、こだわっているということではないんです。
 ただ、農薬を使うと自分も体調が悪くなるし、使わないに越したことはないですよね。薬は自然由来のもの、海藻や酢で出来ているものなんかをいろいろ試してはいますが、効いているのかは分からない(笑)。
 お茶の方はまったくの無農薬ではありませんが、減農薬でやっています。お茶の場合は予防的にまくことが多いのですが、うちは害が出てから使うようにしています。そうすると、年間12回くらい使うところが2回くらいで済む。結果、減農薬にこだわっているわけではないんですが、お客様も喜んでくれる。

−無農薬を売りにはしていないということですが、こだわっているところを教えてください。

澤田さん 肥料にはこだわっています。化成(化学肥料)は使わず、有機肥料でやっています。甘味が出るし、色や香りも良くなります。有機肥料を入れすぎると殻の色が悪くなるので、土壌検査しながらどういう肥料が必要かを丁寧に確認しています。

地に足つけて、地元とともに

−澤田さんにとって、農業のやりがいはどんなところでしょうか。

澤田さん やはり、お客様が喜んでくれ、「美味しかったよ」「ありがとう」の声が聞けたときですね。ワークショップや体験イベントもやっていますが、特に子どもは素直なので美味しくなければ美味しくないとはっきり言う(笑)。子どもが喜んでくれたときはうれしいですね。子ども相手なら儲けがなくてもやりたいくらい。落花生やお茶って子どもはあんまり好きじゃないから、なおさら子どもたちに広めていきたいです。

−最後に、今後の展望についてお聞かせください。

澤田さん お茶に関しては、新しい加工商品を作りたいと思っています。落花生は毎年、商品の供給が間に合わないので、作業を機械化するか人手を増やすか…家族経営で難しいところではあるんですが、いろいろ方法を考えているところです。特に黒落花生はシーズンが始まると年内に売り切れちゃって。
 今は親からの代替わりの時期にきているので、これからの商売について考えていかないといけないと思っています。ずっと地元密着を理想にやってきましたが、これからも牛久、女化にしっかり根付く商売をしていきたいです。

取材・撮影:柴田亮子

【取材録】

落花生が秋から冬にかけて旬を迎えるこの時期、澤田茶園では美しく手入れされた茶畑越しに、畑の風物詩〝ぼっち〟がいくつも並ぶ光景が見られます。掘り起こした落花生を乾燥させるため、豆を内側にして円筒型に積み上げるぼっち。美味しい落花生づくりに重要な乾燥工程で、6週間ほどの野ざらしに耐えられる形の良いぼっちは、長年の経験と技によるものです。
「小さい頃から跡を継ぎたいと思っていた」という澤田さん。毎年取り組む試作は、澤田茶園の未来をかけた大変な挑戦であることはもちろんですが、その根っこには作ることへの喜びがあることに感銘を受けました。次はどんな新商品が登場するのか、楽しみです。

■澤田茶園
茨城県牛久市女化町30
TEL 029-872-0307

澤田茶園WEBサイト:http://www.ushikukankou.com/sawadaseicha.htm
facebook:https://www.facebook.com/sawadachaen/?hc_ref=ARSvDe2aspLKBzHbsX7kQmiFHfwN0JJimxVFQzlBsuu4tOctYVQodsStNalxt1wUX0g

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