いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 藤田観光りんご園

今や関東屈指のりんごの産地として知られるようになった大子町。夏から秋に移りゆく頃、町内のあちこちで、ほんのり色付いたりんごたちの姿を見かけるようになります。農家さんたちはいよいよ収穫を始め、それから11月下旬までの間、りんご狩りを楽しもうと県外からも観光客が訪れます。
浅川地区の丘の上にある『藤田観光りんご園』がオープンしたのは、今から58年前。「当時、大子産のりんごの存在を知る人は非常に少なかった。」と2代目・公子(きみこ)さんは話します。そんな時期を乗り越え、息子さん夫婦が後を継いで20年となった現在も、りんご園は進化し続けています。10月の下旬、次々とお客さまが訪れる中、3代目・卓(たく)さんと奥さまの史子(ふみこ)さんにお話をうかがいました。

絵本のようなりんご園、物語のはじまりは行商から。

−とっても素敵なところですね。まるで絵本の中に入り込んだようです!

史子さん 50種類くらいのりんごがありますから、楽しいですよね。お花もあちこちに咲いていて素敵でしょ。お花はお母さんが植えたんです。お客さんが来てくれるところなんだからキレイにしなきゃって。
絵本の中みたいとか、おとぎ話に出てきそうとかみなさんおっしゃるように、ここはおもしろいところですよ。雰囲気もそうだけれど、りんご園を通していろんなお話があるんです。最初カップルで来て、次来たときはそのふたりが結婚していて、またその次は子どもづれで来てくれてという風に、りんご園としての物語だけでなく、来てくれたお客さんの物語も生まれてゆくんです。ここに来るたびに一つ、二つと物語がつながっていったらいいな~って。

  1.  

−この木(受付棟の向いに植えられたりんごの木)もとても歴史がありそうですね。

卓さん これが最初に植えた木です。りんご園としての物語の始まりですね。今は広範囲にわたって木を植えていますが、初めの頃は家の周りだけでした。当時、りんごが全然売れなかったそうです。まず大子でりんごを栽培しているってことを知らないですからね。農園に来てくれる人もほとんどいなかったから、先代は行商、いわゆる突撃訪問をしていたそうです。あとは市場回り。箱詰めをして、常陸太田市に2件、日立市と大子町が1件ずつの計4件、配達は夜のうちに。大子町がりんごのPRを積極的に行いはじめてからは、大子のりんごの認知度もあがり、需要も増えたため田んぼをつぶして徐々に広げていきました。

守るために挑戦し続ける。先代が築いてきたベースを未来につなぐ。

−アップルパイをはじめ、パン、りんごジュースなどの加工品もおいしいと評判ですね。加工の分野は奥さまが立ち上げたのですか?

史子さん そうです。私が嫁いできた20年前からですね。先代が築いてきたベースを次の段階としてつないでいくためのプラスアルファとして、加工の分野に挑戦することにしました。ゼロから立ち上げましたが、お客さんに育ててもらいながらなんとか形になってきました。
お母さんの行商のように、私が今アップルパイをもって東京など県外に行くことがあるのですが、大子でりんごを栽培していることを知らない人がたくさんいます。「大子=りんご」というPRにつながれば…との想いもありますね。

−守っていくため、つないでいくために挑戦し続けるということですね。

史子さん お客さんに新しいものやサービスを提供していくためにも、挑戦するようにしています。形は変わっていっても根っこは変わらないというか、そうやって物語をつないでいくことが、先代の意思を継いでいくってことになるんじゃないかなと私は思うんです。当園のパンフレットの題名を『りんごをめぐる冒険』にしたのもそういった意味を含めています。

−りんごの種類が増えていったというのもそういうところにあるんですか?

卓さん そうですね。新しいものがあると楽しいのではないかと種類を増やしました。気づいたら50種類を超えていて、自分たちでも驚きましたね。あとは世の中のニーズとか、温暖化などの環境の変化に対応してというのもありますね。5年前くらいから黄色いりんごが出てきましたよね。着色管理がいらないとう点で取り入れている農家が増えていると思います。環境や経済の動きに応じて見直していくことが課題のひとつです。

雰囲気も含めて楽しめるりんご園

−次から次へとお客さまがいらっしゃいますが、みなさんお散歩するようにのんびり園内を周ったり、試食を試食を楽しんだりと、ゆっくり楽しまれていますね。

卓さん 子供が来たときは「この品種探してごらん」って言って園内を探検してもらったり、先代からの常連さんはイスに座って母とおしゃべりしたりと、思い思いに過ごされていますね。りんごやアップルパイは道の駅などにも卸していますが、直接買いに来てくれる人も多いです。りんごは量り売りなので1個から販売できますよ。気になるものなど、いろんな種類のりんごを試してみてください。

−いろんな楽しみ方ができるのですね。

史子さん 奥ではバーベキューもできますよ。また、築115年の家の一角をお休み処にしてあるので、そこでゆっくりしていただいてもかまいません。団体様が来てくれるのはもちろんありがたいですが、個人やファミリーなど、少人数のお客さんがりんご狩りや園内の雰囲気をゆっくりと楽しめる、そんなサービスを提供できるりんご園でありたいなと思っています。
りんご園はたくさんあるけど、それぞれに歴史があって、挑戦してきた人生や自己実現があって、お客さんとのやりとりがある。そんな物語もここで感じてもらえたらうれしいです。

取材・撮影:柴田美咲

【取材録】

これは聞いたことない品種だな。あの木になっている品種はなんだろう。と、りんご畑を冒険するように歩いている自分がいました。りんごを追って畑の奥まで来てしまったときは、ついに絵本の中に迷い込んでしまったかと思いました。
藤田さんご家族のやりとりを見ていて感じたのは、なんといってもチームワークの素晴らしさ。「世代が違うし、考え方も違うけど、それぞれの個性を生かし合えてるように感じるね。」と史子さん。それはお互いがお互いを尊敬しているからこそできること。おいしいりんごに隠された秘密がここにもありました。(柴田美咲)

■藤田観光りんご園
茨城県久慈郡大子町浅川400
TEL 0295-72-5028
FAX 0295-72-0955

藤田観光りんご園WEBサイト:http://www.roy.hi-ho.ne.jp/apple-fujita.htm

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