いばらきの生産者

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 以前は8種類もの品種を栽培し、イチゴ狩りもできる観光農園だったうさみ園。後に宇佐見さんが特別に惚れこむ品種との出会いが訪れます。やよいひめです。やよいひめは2005年に群馬県で品種登録されたイチゴで、この地域ではうさみ園がいち早く、2011年から作付けを始めました。震災の影響を受けて2012年にイチゴ狩りの営業をやめ、これからは直売をメインにしていこうと決意。それから4年の間に、やよいひめはうさみ園を代表する品種へと育っていきました。うさみ園のホームページには、やよいひめの専門農家としてトップランナーになることへの心意気を込めています。

ホームページに込めた意気込み

−ホームページに気になる文言が使われています。まずは「畑で作るうさみ園」について教えてください。畑でいちごを作るのはごく普通のことかと思うのですが、なぜそれを強調されているのでしょうか。

宇佐さん:
 かつてイチゴは米どころの裏作として、収穫を終えた冬の田んぼで作られていました。今でもそうした地域はたくさんあります。イチゴは水分を好む植物なので、田んぼで作ると見た目もよくできて量も採れます。しかし鉾田の場合はうちを含め、元々畑作でメロンなどを作っていた農家がイチゴに転換したケースが多いのです。畑で作ったイチゴは味が濃いと、市場で高評価を得ることとなりました。
 畑だと良いものが採れるという理由で作り始めたわけではなく、結果的に畑で作るとおいしかったという感じだと思いますが、私としてはこの点が “鉾田産のイチゴはおいしい“ の根拠の一つだと思い、お客様に説明する際に「畑のいちご」ということがアピール材料になると考えているのです。

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−「やよいひめで一等賞」という言葉もキャッチーですね。こちらについても詳しく教えてください。

宇佐見さん:
 やよいひめは酸味が極めて少なく甘さが際立っているので、酸っぱい味が苦手なお子様には特に人気があります。「甘くするために甘味料か何か入れているのですか?」と聞かれたこともあるくらいです。果肉は硬めでしっかりとした歯応えで、完熟=やわらかいという概念をくつがえす食感があります。形は大粒でいかにもイチゴらしいきれいな円錐形をしています。こうした特徴はお客様からの評判もよく、この地域ではうちが早めに作り出したという自負もあり、やよいひめ専門でいこうと決めました。

 やよいひめに特化してすぐの2017年に、茨城県いちご経営研究会が開催する年に1度の審査会、「茨城いちごグランプリ」一般の部において、最高賞の大賞を受賞することができました。おかげさまで固定のお客様も多くついてくださるようになり、これからも「やよいひめならうさみ園」と言っていただけるよう、やよいひめで日本一を目指そうという思いを込めています。

この10年の成長と変化

−やよいひめ専門、直売メインに舵を切られて10年ほど経ちますが、この間どのような変化がありましたか?

宇佐さん:
 栽培法においては当初からのステビア栽培(*1)やIPM防除(*2)を継続しています。基本的なところは変わっていませんが、新しいアイテムを導入したり、液肥のタイプを変えてみたり、便利で安全なものは取り入れて、仕事の省力化を進めています。
 逆に収穫時のいちごの摘みとり方などは従来よりもていねいなやり方に変更し、人の手を抜けるところは抜き、その分かけるところはかけて、品質の向上を目指しています。

 また、これまでは新しく入ってきた実習生に先輩スタッフが仕事を教えるという流れで仕事を引き継いできましたが、最近になって海外からの実習生が一旦すべて入れ替わるタイミングがありました。ここが新たなターニングポイントになればと、仕事の進め方と伝え方を見直して、新人教育を改善しようとしているところです。

*1 ステビア栽培(キク科植物ステビアには有用な微生物を活性化させる効果があるとされ、豊富なミネラル分の抗酸化力には作物の味をよくするなどの効果が期待できる)
*2 IPM防除(害虫の天敵を使うなど化学的な防除だけでなく、物理的手法、生物的手法を利用した害虫対策)

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−販売面での変化はありましたか。品質において納得できない日には販売しないとのことですが、その点も教えてください。

宇佐さん:
 イチゴ狩りをやめた当初はほとんどを市場出荷していましたが、2016年に園内に直売所を作ってから、徐々に直接買いに来てくださる方が増えました。今では生産量の4割ほどが直売所で売れています。市場出荷の他には提携するゴルフ場の通販、和菓子屋さんやフルーツサンド屋さんへの卸し、海外輸出などの販路があります。

 ご近所の方は前日に採った完熟品やB級品、形の不揃いなファミリーパックなど、お得な商品を目当てに、シーズン中は毎日のように開店前から並んでくださいます。県内外、遠くは都内や神奈川からのお客様にもリピーターが多く、「孫がここのいちごじゃないと喜ばないから」と足繁く通ってくださる方もいます。

 農産物は天候の影響などもあり、工業製品のように毎日同じ味を出し続けられるわけではありません。コロナ前はまずは試食をしていただき、今日のいちごはこうですよと、納得されたうえでお買い上げいただいていました。しかしコロナ対策として試食を出せなくなり、時に、直売所での販売は見合わせようと判断する日もあります。

 以前2回目にいらした方で、「前回のはそれほどでもなかったね」と話してくださるお客様がいました。本当にありがたいことです。大概の方は1度がっかりしたらもういらしてくれませんから。口コミなども以前は良いことばかりを書いてくださることが多かったのですが、お客様の数が増えてくると、「送られてきたら傷んでいた」など厳しい意見も聞こえてくるようになります。そうしたご意見は胸に刺さり、どうすればそうならないようにできるのか、工夫を重ねています。売れば終わりではなく、最終的にお客様の手元にどのような状態で届くのかということまで気にかけたいと思っています。

いいものを作り、きちんと評価してくれる人の手へ

−今後の課題はありますか。

宇佐さん:
 一番の課題は、やよいひめの収穫期に関することです。やよいひめはその名の通り2月中旬から3月に旬を迎える春のイチゴです。気温が上がり一般的に品質維持が難しくなる3月を過ぎても、5月いっぱいはしっかりと高品質なイチゴが採れます。ただし他の品種に比べてスタートが遅く、例年年明けくらいから。イチゴの需要が高い年末年始に対応しきれていないのが現状です。

 クリスマスやお歳暮に合わせて早出しできるよう、一番花を早くつけさせるコントロールは可能なのですが、そうすると2番花までの間がかなり空いてしまい、イチゴが採れない空白期間ができてしまいます。
 当園がこれから取り組もうとしているのは、最初のイチゴを早出しできるようになり、なおかつ2番目の花も間を空けずに咲かせられるようにすることです。そのために夜冷育苗、クラウン冷却といった手法を組み合わせ、イチゴの生理に働きかける実証実験をしているところで、今シーズンから収量調査を始めています。

 当園としてはとにかく直売所に来てくださるお客様を大事にしたい。そのためシーズン中は直売所も休みなく毎日営業しています。ケーキ屋さんなどからオファーをいただくこともありますが、現状では契約先が増えると直売所での販売に影響が出てしまうということもあり、今は販路を増やすことを控えています。ここまで来てくださる方に「来て良かった」と思ってもらえるよう、お客様の期待に応えるいちごを並べて喜んでいただきたいです。

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【取材録】

 季節になればスーパーの生鮮コーナーにはたくさんのイチゴが並びますが、わざわざ農園まで足を運んで買いにくる方は、特別のおいしさ、採れたての新鮮さ、口コミや宣伝文句に値する価値を求めてやってきます。「期待に添えないものを販売したら、もう来てもらえなくなってしまいます。特に初めていらした方に満足いただけなかった場合、2度目はありませんから」と宇佐美さん。シーズン中は毎日欠かさず店を開け、納得できるものだけを販売すると明言するのは、覚悟の要ることだと思います。
 日々の情報はフェイスブック等で発信中。収穫間際に太陽の光を浴びたいちごは糖度がグッと増すそうですので、直売所でのお買い求めは、晴天が数日続いた後が狙い目です。

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