いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 女化ブルーベリーの森

茨城県内では、つくば市、かすみがうら市、小美玉市がブルーベリーの主な産地で知られています。そんな中、牛久市のブルーベリー農園は数件。その一つが、のどかな農村風景が広がる女化(おなばけ)にある「女化ブルーベリーの森」です。柔らかな陽の光が差し込む小さな森の先に、840本が植わる摘み取り農園があります。こちらでは、農園とその周りの環境の良さを活かして、オフシーズンにマルシェイベントも定期開催しています。訪れる人々の概念を覆すブルーベリーづくり、そして農園から生まれる人・地域とのつながりについてお聞きしました。

両親の夢からはじまったブルーベリー農園

―近場ではつくば市が主な産地として知られていますが、なぜこの土地でブルーベリーづくりを始められたのですか。

本多さん 元々は、私の両親のセカンドライフとして始めました。叔母が成田で小さな農園をやっているんですが、父が定年になったら同じようなことをやりたいという思いを持っていて。ここへ来る前、私は主人と子どもと千葉に住んでいて、専業主婦でした。埼玉にいた両親と一緒に住むことになり、ちょうど良い場所を探す中で、縁あってブルーベリー畑のあったこの土地と出会いました。父と母だけでは手が足りないので、家族で協力してやろうということになりました。両親も私も、これまでにやったことがなかったので、全てが試行錯誤で。父が亡くなってからは、私が引き継いで、主に母と二人でやっています。

失敗を成功の糧に、経験を一つ一つ重ねて

―手探りでのスタートということですが、どのように農園をつくっていったのですか。

本多さん ここに植えてあったものは、高さ50センチほどで1、2年目くらいの小さな苗でした。700本あったところに、140本新たに加えて、840本にしました。農園は2012年6月にオープンしたんですが、植えたのはその3年前。最初の2、3年は実がなりませんでした。
 栽培については、叔母と苗屋さんに基本を教えてもらい、後は独学で勉強しました。特に剪定は難しく、切り方が甘いと実がたくさんなって、栄養が分散して大きくて甘い実が育ちません。いい塩梅で剪定できたか精神的なプレッシャーは常にありますが、摘み取りに来られたお客様が「大きい!甘い!」「これがブルーベリーなの?」と、驚かれて笑顔で帰っていくのは本当にうれしいですね。また、ブルーベリーは酸性の土を好むので、土壌管理も目を離せない繊細な作業です。剪定にしろ、土の管理にしろ、人から聞いただけでは身にならないので、実際にやってみて失敗を経験して「こうすればいいんだ」の繰り返しで自分たちのやり方を編み出してきました。

―こちらではどのような種類を育てていますか。その特徴などを教えてください。

本多さん 系統としては二つ。前半の6月上旬〜7月中・下旬は、ハイブッシュ系、後半の7月下旬〜8月下旬はラビットアイ系が実ります。ハイブッシュ系は、粒が大きくて酸味が少なくジューシーなのが特徴です。寒暖の差や土質が合っているようで、この辺りでは育てやすいです。
 ラビットアイ系は、皮が硬めで濃い甘さが特徴です。水分が少なめなので、ジャムなどの加工に向いています。ブルーベリーの品種としては200種ぐらいあるんですが、うちにあるのはこの2系統の14種類です。 

―仕事のサイクルを教えていただけますか。

本多さん 年明けから3カ月くらいが剪定期間、4、5月は開園の準備で、園内の環境を整えます。主には地面のシートの取り替えや草取り、ネットの準備です。6〜8月が摘み取りの最盛期で、毎日フル稼働で収穫・出荷、お客様対応となります。秋になると少し落ち着きますが、うちは無農薬栽培で除草剤も使っていないので、この時期も雑草をひたすら抜いています。肥料は3、6、9月の年3回です。
 草取りがなかなか大変な作業ですが、せっかく美味しい実がなっても草ぼうぼうで蚊や虫がたくさん…というのはお客様に申し訳ないので…。安心して楽しく摘み取りしていただきたいと思い、ブルーベリー以外のところでは園内の環境にこだわっています。農園の一角にはハーブも植えているので、自由に摘み取ってお持ち帰りいただけます。

個性豊かな14人の子どもたち

―無農薬で除草剤も使っていないとのことですが、他に取り入れていることはありますか。

本多さん 保水と防草、根の保護のために、農園の入口となる森の広場と園内に、木材チップを敷いています。ブルーベリーの根は毛細根で、横に広がって伸びていくので、フカフカの土を保つことが大切なんです。チップの状態を見ながらほぼ毎年入れ替えています。
 ただ、ラビットアイ系は、多少根を痛めつけた方がよい実がなるので、ハイブッシュ系ほど甘やかしません。「ほめて伸ばすタイプ」「厳しく育てるタイプ」と、系統で違うんです。木の樹形もきれいに伸びてくれる木、四方八方に伸びるやんちゃな木と、本当に様々で面白いです。系統、品種ごとに特徴があるのでそれを見極めながら、個性豊かな14人の子どもだと思って育てています。

―ジャムやジェラートなどの加工品も作られていますよね。

本多さん 出荷先がまだ市場くらいだったころ、お客様もついていなくてほとんどの実が落ちてしまったことがありました。このままではいけない…ということで、4年くらい前に加工も始めました。ジャムの評判がよかったので、ジュース、アイスと増やして、一昨年にはロゴ・ラベルもデザインしてもらいました。ブルーベリーとジャムは県南の一部のスーパーと牛久市のふるさと納税に出荷していて、市内外のイベントに参加したときにはアイス、ジュースも販売しています。

この土地の魅力を知ってほしい

―オフシーズンに開いているマルシェイベント「森ノ音」について教えてください。

本多さん つくばを見れば、観光農園が何十軒とありますが、都心からのアクセスはこの辺りの方が近いんですよね。でも観光農園の認知度はまだまだ低いと感じていて、前々からこの環境をもっと多くの人に知ってほしい、オフシーズンでも人を呼びたいと思っていました。一人では動けず鬱々としていたとき、ここを見た友人に「もったいない!」と背中を押してもらい、何人か仲間を募って十数店舗で開いたのが始まりです。
イベントは、お子様連れを対象にしたワークショップをメインにしています。子どもたちにこの森でわいわい楽しく過ごしてほしいという思いがあって。2014年の春に一回目を開いて、すぐ隣のショップと合同でやるようになって、春と秋の年2回に落ち着きました。現在は、飲食店と手作り作家さんが20軒くらいです。自分自身、市外のイベントに参加する機会が増えて、出会いも広がり、県央辺りから参加してもらうこともあります。だんだんと認知度も高まってきて、この地域を知ってもらうよいきっかけになりました。

―最近ではちょっと変わった食と体験イベントを開いていましたね。

本多さん この森を会場に、バーベキューとツリークライミングのイベントを開きました。農園の管理が手薄にならないように、知り合いに声をかけて協力してもらったんですが、想像を超える素晴らしい内容でグランピングのようでした。参加した方たちは「軽井沢にいるみたい!」と、ゆっくり癒されて帰っていかれて。この森の可能性がまた一つ広がりました。今回は試験的に開いたので、今後はオープンでやってみたいです。

―今後の展開が楽しみですが、農園の目指すところをお聞かせください。

本多さん 最近は掛け合わせのものがどんどん出ているので、新しい品種を増やしていきたいです。今は、シーズン中
の摘み取りとそれ以外の出荷が半分半分の割合ですが、ブルーベリーには自信を持っているのでもっと多くの方に来ていただいて100%摘み取り園でやっていきたいです。そして、この森を使ってもっといろんなことしていきたいです。若い人たちにもこの地域に来てもらえるように、周りの人たちと協力して人を集めて、地域として盛り上げていければと思います。

【取材録】

本多さんの農園を初めて訪れたのは4年前、オフシーズンの秋の頃。もちろんブルーベリーの実はなっていませんでしたが、その代わり、燃えるような鮮やかな紅葉に出会えました。840本の赤い群れ。それは美しい光景でした。丁寧に手入れされた農園は、どこか外国の風景のような雰囲気もあり。訪れる方たちに気持ちよく過ごしてもらえるように…という本多さんの心遣いが全体ににじみ出ていました。100円玉サイズは当たり前、中には500円玉サイズもある大粒で甘いブルーベリー。夏が近づくにつれ恋しくなるあの味には、「だからか!」と納得できる作り手の思いがありました。

■女化ブルーベリーの森
茨城県牛久市女化町142-1
Tel.080-3512-6304
E-mail:roddjuret@gmail.com
WEB:blueberry-forest.jimdo.com/
Facebook:https://www.facebook.com/onabakebb/

<開園期間>※シーズンによって異なります。
6月上旬〜7月下旬:9:00〜17:00(水曜定休)
8月いっぱい:9:00〜14:00(土・日曜のみ開園)
・摘み取りコース/グラム200円
・食べ放題コース/大人1,000円、子ども500円
・直売/100g・250円、200g・500円

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