いばらきの生産者

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「奥久慈しゃもに魅了され、茨城県大子町に移住しちゃいました」ーー伊澤さんのブログ『奥久慈しゃもと田舎ぐらし』には、そんな自己紹介が添えられています。軽やかな言葉の裏に隠された、根っからの地元民ではないからこその覚悟の強さと俯瞰の目線。県を代表する産品の振興に、東京からの新規就農者が最前線で奮闘しているという事実に、刺激を受ける取材となりました。

負けない味

ー伊澤さんの人生を変えた奥久慈しゃもとの出会いと、その味の特徴について教えてください。

伊澤さん 東京に住んでいた頃、新宿のデパートで買ってきた奥久慈しゃもを、すきしゃぶにして初めて食べたときの衝撃。とにかく肉がおいしくて。調べたら、たまたま生産者募集中であることを知り、こんなおいしい鶏を自分で作ってみたいと思い、生産組合を訪ねてみたのです。その後関連して高知や長野、福島の地鶏なども調べましたが、大子は流通面での地の利が良く、何よりもその味に魅了されてしまったので、1年後くらいには移住して生産者になることを決意しました。さらに実際に転居するまでの約2年間は、月に数回研修のために大子まで通いながら、生産者として新しい生活を始めるための準備にあたりました。
 奥久慈しゃもはくせがあります。特に腿の部分は野性味が強い。決して万人向けとは言えませんが、引き締まった肉質と、噛むほどに溢れ出る濃い旨味、このジビエっぽい食味が好きなんです。ミシュランガイドに載るような都内の焼き鳥専門店や鶏料理専門店で使われていますので、しゃも肉としての知名度は高いですが、食べたことがない方に、その真価を本当に理解して生かしてもらうのはなかなかに難しいです。奥久慈しゃものポテンシャルを最大限に引き出すには、料理人の腕も問われます。でも、上手に生かすことができれば、世界中のどんな銘柄品と比べても引けを取らない。負けてない。肉の繊維が他の鶏とは違うんですね。焼きすぎるとたいへんですが、うまく焼くと何とも言えないジューシーさがある。皮がまた抜群にうまい。もし私が料理人で鶏を出すなら、奥久慈しゃもを選びたい。そういう鶏です。

生産の課題

ー生産者になって4年目とのこと。飼育方法や経営面についてお聞かせ下さい。

伊澤さん 餌はトウモロコシ、ふすま、大豆を与え、平飼いの鶏舎で運動も十分に育てています。移住してきた当時は組合全体で年間5万羽出荷していましたが、すぐに震災があり需要が激減。何とか持ち直してきて、現在は42000羽で需要と供給のバランスが取れているところです。今年になってやっと新規の引き合いが増えてきて、需要の方がやや高めとなってきました。しかし奥久慈しゃもは雄が125日、雌が155日前後と、生まれてから出荷までの期間がブロイラーの3倍近くかかります。しかもとても繊細で、ちょっとした物音にも驚いてパニックを起こして一カ所に集まる習性があり、簡単に何十羽も圧死してしまいます。夏場は食欲が落ちて体重がのりにくい。冬場は寒さに弱く、鶏舎の中にビニールハウスを 作り二重構造にして暖房するなど、その飼育には多大な経費と労力がかかります。ですから受注が来たからと簡単に増やせるものではなく、確実な出荷予定がある上で初めて飼育計画が立てられるのです。
 近年は生産者の高齢化により廃業される方も出てきました。いま奥久慈しゃもを生産している農家は7軒。40歳の私が最年少です。私自身は現在4棟の鶏舎で年間5000羽強を生産してきましたが、年内には3棟を建て増しし、完成すれば8000羽強になる予定です。組合全体で最低限今の出荷量をキープしていくには、後継者の確保も直近の課題です。

再考・奥久慈しゃものブランド力

ー後継者の育成と、奥久慈しゃもの価値を理解して生かしてくれる出口の確保、この2つが今後の発展の鍵ですね。それらを実現するために、何が必要とお考えですか。

伊澤さん 後継者の育成については、まず私自身が結果を出すことだと思います。始業から5年目を1つの区切りと考えてやってきました。震災後の需要が落ちこんだ時には、仕事を終えてから東京へ行き、伝を頼って訪ねたレストランで閉店後に話しを聞いてもらい、3時頃帰宅して5時からまた仕事ということもありました。もちろんそんなことは到底続きませんでしたが。でも目標の5年目まであと1年半。その間に経営として成り立つ数字を出すことで、後に続きやすい環境になるのではと思っています。
 そのためにも、需要の拡大については、本当の意味でのブランディングが必要と感じています。100g40円の胸肉があるのに対し、奥久慈しゃもは400円。しかし品質を保つために、価格は下げられません。むしろ労働力の対価としてはもっとほしいくらいですから。そういうことを理解していただくには、価格に見合うだけの価値があることをしっかり伝えられなければならない。先に話した通り、奥久慈しゃもの名はそこそこ知られていますが、全ての方に本当のおいしさを味わっていただけているか、不安な部分もあります。大したことないねと思われてしまうことがないよう、御用聞きのような受け身の営業ではなく、扱い方のアドバイスやメニューのヒントを示せるような提案型営業が必要だと感じています。奥久慈しゃもは既にブランド肉というイメージが定着していますが、それに安心しきってしまうことに危機感を覚えます。
 奥久慈しゃもはジビエの本場ヨーロッパでも通用する、名実共に備わった本物の食材であり、茨城県がたいせつにしなくてはならない商品です。その魅力をもっと多くの方に知っていただきたい。初めて奥久慈しゃもを食べた時の印象がその後を左右すると思いますので、イベント等での試食の提供の仕方も重要と考え、今いろいろと模索している所です。県民の皆さまにもこれまで以上に身近に食べていただき、大子の奥久慈しゃもはおいしいよと、声に出して応援をしていただけたら幸いです。

【取材録】

大子へ移住し鶏生産者になることは、家族の生き方も左右する大きな決断です。その最大の動機が奥久慈しゃもの味に魅かれてという純粋な理由であることに、少なからず感動しました。伊澤さん本人はおおらかで快活なお人柄ですが、仕事に関しては常に不安要素を念頭に置き、それに備えて今できることを精一杯にやるというスタンスなのだと思います。軽妙でストレートな語り口に、本気が放つ熱を帯びている。この熱が周囲に伝播することを切に願います。

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