家庭の庭やマンションのベランダで、自分たちの好きな果実を育ててみたい-そんな園芸愛好家の夢を叶えるために、茨城農園オリジナルの果樹苗を開発、「YD(ワイダイ)フルーツ」として全国のホームセンターなどで人気を集めています。その苗の特徴は樹高を約2メートルほどに押さえ、通常よりも早く実のなる矮化を施したところにあります。地植えはもちろん鉢植えなどでも栽培が可能とあって、多くの人たちがYDフルーツの実のなる樹木の栽培を楽しんでいます。
花と実と紅葉と、育てる楽しさは3倍!
-YDフルーツというのはどういう特徴を持っていますか。
越渡さん 私どものYDフルーツは低木で育成できて、実がなるまでの成長も早いのが特徴です。コンテナ栽培もできますので、剪定さえしていれば人の背の高さほどで楽しむことができます。品目はモモ、スモモ、リンゴ、クリ、アンズ、プルーン、サクランボの7つで、品種にすると30ぐらいあります。一般にはポット苗にして販売しています。
-店頭に出すまでの工程はどのようなものでしょう。
越渡さん 矮化という技術は昔からあるのですが、台木を養成して、中間台を付けます。中間台からの樹根も出させることで台を強くしてから穂木を育てます。ここまで約3年ほどの月日が必要となります。接ぎ木の特性を利用して、モモとアンズ、白桃とスモモなどの2種類の果実が楽しめる苗も販売しています。
-1本の木でふたつのフルーツが楽しめるのですね。
越渡さん 「ペアフルーツ」と呼んでいます。完全に違うものをドッキングさせたのは我々だけでしたが、他のメーカーも追随するようになりました。接ぎ木の相性もあるのでそれを確かめながら進めていきますが、だれもやらないことをやってみるという楽しさもあります。
-フルーツ果樹は食べる楽しみもありますよね。
越渡さん フルーツは花が咲いて実ができる喜びがあります。また、広葉樹なので紅葉も楽しめます。ガーデニングや園芸ブームなどで、実のなるお得感から家庭での果樹栽培が広まりましたが、現在は食の安全、安心、新鮮なものといった食へのこだわりもあります。やっぱり自分で作った果物には愛着がわくでしょう。子どもの出産や記念日などメモリアル、シンボルツリーとしても果樹を植える方もいます。子どもと樹木を共通点にしている家庭も多く、孫のために食べさせたいといった願いもこもっています。
-エンドユーザーの顔が浮かびますね
越渡さん これからは売るだけじゃなくて、育て方などの栽培技術もアドバイスしなくてはいけません。虫が付いたり、病気になったりするので適切なアドバイスも必要です。私どもはネット販売もしており、苗木とともに実も入れて送ってあげたら、そのお客さんは実をジャムにしてくれて贈ってくれたことがありました。お客様と直接対話していくという姿勢が必要なんですね。
【取材録】
土質が果樹栽培に向いているというかすみがうら市は観光果樹園も多く点在するフルーツパラダイス。その実を売るのではなく苗木を生産する農園として、「YDフルーツ」をブランド化し、その販路は広がりつつある。苗木生産に取り組む茨城農園の3代目の康弘さんはまだ27歳という若さだが、その熱のこもった話しぶりは仕事に対する自信と愛情があふれていた。樹木は人が感情移入しやすい植物だ。それだけに越渡ファミリーの苗木一本一本に対する思いは熱く、真剣なものが感じられる。
>ホームページ http://www.ibanou.jp/index.html