昔から半農半漁の生活が営まれていた地域に「れんこん」という野菜栽培が始まったのはほんの40年ほど前から。意外に歴史の浅い野菜栽培ですが、今や日本一の出荷量を誇る茨城のれんこん。文字通り泥だらけになって栽培に取り組んでいるのが、男3兄弟の宮本さんトリオです。
3人兄弟で農園を経営するのは日本で3軒だけ
-3人兄弟でれんこん栽培というのは珍しいですね。
宮本 長男の私は元教員で、弟二人が先にレンコンを作っていました。3人で「宮本兄弟農園」としてやってきましたが、6月に法人化しました。私が営業を担当し、弟の昌治が経理、下の弟の昭良が生産-というような担当分けをしています。日本では3人兄弟で農業をやっているのは3軒だけだそうです。
-れんこん栽培は代々続いているのですか?
宮本 元々半農半漁で、父親の代に農業にシフトしました。国の転作事業をきっかけにれんこんを始めました。この辺は霞ヶ浦の低湿地帯で、肥よくですがトラクターやコンバインを入れられないのです。ですかられんこんがうまく合っていたのです。れんこん栽培は平均2人で3ヘクタールといわれていますが、うちは8・2ヘクタールほどです。また、このあたりは砂地でキメが細かくツヤのあるれんこんが出来ます。
-れんこんの栽培サイクルはどのようになっているのですか。
宮本 種から収穫するまでには3~5年掛かります。4月、5月に植え付けして、夏の暑い時期に生育します。収穫できるのは9月からですが、出来上がった時にすべて収穫しなくていいのが特徴です。れんこんは自分で休眠してくれます。ですから需要の高まる年末に集中して収穫することも出来ます。発注量に合わせて出荷できるのです。また、ハウスでも栽培することで、出荷時期を調整することができます。でもやはり収穫時期は寒い時期の作業が多く、半自動の掘る機械もありますが、基本的に手作業で厳しいものがあります。
-栽培に気を使うことはありますか。
宮本 年に2~3回は土壌診断をしています。それにより追肥を行うなど土壌管理は大切です。もちろん成分分析は欠かしません。「おいしくて」「害のないもの」を提供する努力は手を抜きません。また、収穫は折ってしまっては商品になりません。畑では膝をついて水の勢いで掘り出します。また、葉が大きいために風に弱いのです。成育中に強風が吹くと全滅してしまう危険もありますね。
-規格や出荷先は?
宮本 れんこんの品種としては50種類ほどありますが、メインは10種類ほどです。観賞用の花バスなども栽培しています。れんこんはやはり大きいものが好まれています。出荷先は農協、契約、小売り直売がそれぞれ3分の1ずつで、残りの1割が発注に合わせた調整用です。れんこんチップやつけものなどの加工品もあり、粉にしてうどんなどに入れるなどの加工も一部でされています。
-法人化してますます宮本3兄弟の結束が強まりますね。
宮本 それぞれ家族を抱えており、法人化したことでメリットが多いと考えました。都内のレストランを中心に「れんこん三兄弟」のブランド化を一層進めて行きたいです。
【取材録】
兄弟3人そろって同じ道を歩み、力を合わせて同じ仕事に取り組むという家族の姿は、形容しがたいうらやましさと驚きを感じます。古来、れんこんは縁起の良い食べ物で、8つの穴は「先を見通す」ともいわれます。近年「花粉症」に効果が高いと注目を集めるれんこん。節ごとに仲良く並んだ地下茎は先へ先へと枝分かれしながら子や孫を増やしていきます。それはまるで「れんこん三兄弟」の未来を象徴しているかのようです。
>ホームページ http://www.renkon-kyoudai.com/