いばらきの生産者

HOMETOPICSTOPICS01 > 武藤観光農園

 関東平野の北の端、阿武隈山地と八溝山地に囲まれた常陸太田市。ここは茨城県随一のぶどうの産地です。カルシウムやミネラルが豊富で、水はけの良い丘陵地帯、昼夜の寒暖差が大きいなど、ぶどう栽培に適したこの地で、「常陸太田巨峰」の試作が始まったのは昭和34年のこと。後にオリジナル品種「常陸青龍」を開発するなど、50年以上にわたり地域全体でぶどう栽培に取り組んでいます。
 JA常陸の常陸太田ぶどう部会では、現在54名の部会員が元気に栽培に励んでいます。そのほとんどが初代か2代目で、50代から80代の年配者が多いなか、異彩を放つ若い存在がありました。「武藤観光農園」の3代目、武藤翔平さん(26歳)。終始屈託のない笑顔ですが、その言葉の端々にはぶどう栽培にかける並ならぬ熱意がみなぎっています。緑の風が吹き抜ける美しいぶどう畑で、これからを見据えたお話を聞くことができました。

木漏れ日と緑の風に育てられ

 けっこう気温も上がってきていますが、不思議なことにハウスの中の方が涼しいですね。解放した屋根から風が入って気持ちがいいです。

武藤さん 普通ハウスの中は暑いものですが、ぶどうの葉陰になっているので作業していても涼しいですよ。ぶどうはこの葉っぱがとてもたいせつなんです。特に房に近い葉は影響が大きいので1枚1枚だいじに、色や大きさに気を使って調整しています。葉が大きくて立派だと、ぶどうの粒も大きく張ってくるんです。あとは明るさですね。葉っぱの量が多すぎてハウス内が暗くなってはだめだし、明るすぎてもぶどうが日焼けしてしまう。青々とした元気な葉で、いい感じに木漏れ日が射すくらいがいいんです。

 このハウスにあるのは何という品種ですか?他にもハウスはあるのですか?

武藤さん ここはシーズンのはしり、7月末位から収穫が始まる1番手のハウスです。皆さんよくご存知の緑色のシャインマスカット、皮が赤くて1粒が30g位にもなる極大粒のバイオレットキング、細長くて濃い紫色になるハイベリー、緑色でやはり大粒の天晴(あっぱれ)など、すべて皮ごと食べられる種無し品種8本が植わっています。巨峰や常陸青龍のハウスはまた別になります。
 当園の主力はシャインマスカット、巨峰、常陸青龍の3品種ですが、ぶどうは種類によって味や香りなどそれぞれに特徴があるので、お客様の好みに応えられるよう、また詰め合わせた時に彩りがきれいなように、毎年さまざまな品種にチャレンジしながら15〜16種類作っています。
 ハウスは全部で6ヶ所と、露地の畑が4ヶ所あり、そこは雨よけとしてビニルの覆いを上部にだけかけています。雨があたるとどうしても病気になりやすいですし、スタート時期や肥大させる時期など、生育に適した水管理が非常に大事と考えています。下の池と田んぼからポンプアップした水を使って、潅水をコントロールしているのですが、自分が目指すぶどうを作るためには、将来的には栽培管理のしやすいハウスが主流になっていくのかなと思っています。

レベルの高いぶどうを目指して

 武藤さんが目指しているぶどうとはどのようなものなのですか?

武藤さん ひと言で言えば、大粒でおいしいぶどうですね。粒を大きくするだけなら簡単なのですが、その大きな一粒一粒に味をのせるというのがなかなか難しいんです。単に甘ければおいしいのかというとそうではなくて、糖度は20度位まで上がりますが、甘すぎると喉にくるというか。巨峰だって程よく酸味があるからおいしい。そういうちょうどいい具合ってあるじゃないですか。
 1本の木で2週間くらい収穫するので、100%の状態から採り始めたのでは後半で糖度がのりすぎてしまう。だいたい17度を目安に、少しあっさりめに、もう少し食べたいなと思えるところで採るようにしています。逆に生育が遅れてそこまで味がのっていない時には、お客様に待っていただくこともあります。
 また、粒が大きいだけでなく、房としての見た目の良さにもこだわりたくて、最終的には都内の高級フルーツ店で並んでいるくらいのレベルにもっていかないといけない。それを常陸太田の山のなかで販売しようと(笑)
 常陸太田のぶどうは地元の直売所でほとんど売れてしまうのですが、最近、常陸青龍を都内で販売する動きが始まりました。目の肥えた都内の方に知っていただき、評価を受けるのもいいのかなと。それをきっかけに常陸太田を知ってもらい、この場所で直接買っていただくようになって、常陸太田の観光に少しでも光が当たればというのが理想です。ですからネット販売はしていなくて、ここまで足を運んでいただいて、ぶどう狩りなど楽しんでいただければと思っています。

ぶどうをデザイン 農業経営をデザイン

 ぶどう狩りはいつ頃できるのですか?また、大粒品種をメインにしていかれるのですね?

武藤さん 販売は7月下旬から9月下旬まで。敷地内の直売所での試食販売と、道の駅ひたちおおたでパック販売をすることもあります。ぶどう狩りは8月末から9月下旬まで、主に巨峰をメインにお楽しみいただけます。
 品種によって大粒ということもあるのですが、その中でもひときわ大きくおいしく作ることを目標にしています。ぶどうは生産者が仕上がりをコントロールしやすい果樹なのです。房の大きさや粒の生らせ方などをどのようにもっていくか、収穫時期をいつにするかなどの栽培計画を立て、例えば7月下旬から収穫するには、それぞれの木によって逆算して栽培を始め、温度・肥培・種無しの処理などを適切な時期に行ないます。
 また、ぶどうの木の植栽の仕方や、長梢で作るか、短梢で作るかという枝管理によっても、最終的にどんなぶどうに仕上げるかを想定することができます。最近は1キロを超えるような大きな一房よりも、小さな房で何種類かを味わいたいというニーズもありますので、粒は大きくても房はコンパクトに、あえてそのように仕上げる畑もあります。

 ぶどう作りのたいへんな点はどんなことですか?

武藤さん ぶどうは種類によって味、香り、皮の厚さ、割れやすさなどそれぞれ特徴があるので、品種ごとに、そのぶどうに適した生育をさせてやらなくてはなりません。例えば、粒揃えを良くし、房の形をきれいに整えるための摘粒作業など、一房ごとに手をかけて面倒をみるのですが、これさえも摘粒しやすい品種とそうでない品種があったりして、自分は比較的管理が簡単と言われているシャインマスカットが苦手だったりするんですね(笑)
 あと、長梢栽培は木の思うままに枝が伸びているので、自然の理にかなっているけれど理想的な房の収量は少ない。短梢栽培は大きいぶどうを作りやすいけれど、枝が暴れるのでその剪定がたいへんです。
 うちは両親と祖母、パートさんが2人、そして自分の6人で、トータル1町6反5畝の畑をやっています。他から見るとこの広さをなんでそんな人数で回せるの?と思われるのですが、祖父がぶどうを始めた年に生まれた父親が、長年やってくるなかでいいサイクルを作り上げてくれたからなんですね。仕事はずっとありますけど、追い込まれない状態でうまく回っています。これから自分が中心になっていったら、そうした作業効率を考えて栽培計画を立てるなど、バランスを取るのがたいへんになると思います。
 そして何よりたいへんなのは、大粒の実で味をのせること。味で負けたくないんです。

【取材録】

ふかふかの土に柔らかい下草、風がぶどうの葉を渡る音がして、周囲まできれいに手入れが行き届いた武藤さんの畑は、とても気持ちの良いところでした。しかし、この地域もやはり後継者不足が悩ましい問題になっています。生産者の多くが庭の地続きに畑を持っているため、第三者継承が難しいとのこと。翔平さんのような若者たちに大きな期待がかかっています。
それにしても、ぶどう作りがこれほど人智でデザインできるものとは知りませんでした。それだけに作り手の情熱と努力によって、同じ品種でも別物になっていく可能性が高いでしょう。今回2代目のお父様のお話はうかがえませんでしたが、翔平さんの言葉の端々に、その存在の大きさを感じました。翔平さんがぶどうの明日に希望を抱けるのも、50年間ひたむきに良いものづくりを心がけてきたご家族があってこそと思います。地域を俯瞰する視点や経営者的思考も備えた若き生産者が、高い理想に向かって活躍していく時に、周囲の先輩方が温かく見守りながら支えてあげることが、大きな飛躍への励みになることでしょう。

■武藤観光農園
茨城県常陸太田市瑞龍町1243
TEL.0294-72-2175

武藤観光農園
http://www.hitachiohtakyoho.jp/info/info16/

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