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HOMESPECIAL > 由緒正しき水戸のお茶、古内茶のいま

 緑濃い城里町を流れる藤井川。その川に沿うように広がる茶畑が古内茶の産地です。奥久慈茶、猿島茶とならび茨城三大銘茶のひとつに数えられている古内茶のルーツは、かつて水戸光圀公がそのおいしさに感動し、「初音」と呼ぶことを推奨した薫り高いお茶。当時は清音寺の境内だけに栽培するのが決まりでしたが、もっと多くの人においしいお茶を飲んでもらった方が良いという光圀公の勧めにより、古内地区一帯で広く栽培されるようになりました。以来、光圀公のお墨付きとして、たいせつに伝えてきた古内茶。名実ともなう天下一品を保つべく、30年程前から組合内部で審査を行なうようになり、近年はより厳正さを追求しています。今年も新茶の季節を迎え、古内茶生産組合主催による品評会が開かれました。

厳正な審査で品質を維持

 品評会は茨城県農業総合センター山間地帯特産指導所と茨城県県央農林事務所笠間地域農業改良普及センターからの客員2名と、古内茶生産組合員より選出された3名の計5名を審査員とし、価格帯ごとにブラインドテストによる官能審査を行います。

 まずは茶葉の外観審査。よく見ると出展者によって茶葉の色味に違いがあります。濃い緑色のものはおおむね味が濃く、色の薄いのはまろやかであることが多いそうですが、なかには色が薄くても渋みの強いものもあり、この時点では一概に良し悪しは判断できません。

 蒸した茶葉をもむ揉捻(じゅうねん)工程の仕上げ、煎茶独特の細長い形に仕上げるために一定方向にだけ茶葉をもむ精揉(せいじゅう)では、針のように細く捻(より)をかけるのが理想ですが、それには経験だけでなく技術的なセンスも問われます。

 次に茶碗に3グラムの茶葉とお湯を入れ、まずは水色(すいしょく)と香気の審査。水色もまた外観と同様に萌黄色から濃い緑色までそれぞれですが、これも濃ければ良いというわけではありません。溶け出した色素の粒子が細かく、湯のなかに霧のように立ちこめているのが上等です。
 香りの審査は茶こしで茶葉をすくいあげては確かめていきます。お湯を注いだ直後から刻々と変化してゆくお茶の香り。なかにはくっきりと違いを感じるものもありますが、時間が経つほどに差異があまりよくわからなくなる難しい審査を、長年の経験により粛々と進めていく審査員。

 最後に味の審査を行うために、器を新しくして再び3グラムの茶葉に湯を注ぎます。外観、水色、香気の審査で問題なかった茶葉であっても、味の点で出展した価格帯に相応しくないと判断されることもあります。その場合は価格帯のランクを下げるか、組合には出荷しないか、生産者自身が選択をします。また、この時点で判断の難しいお茶については、あらためて急須で淹れて協議を行うなど、慎重な審査が行われました。

 審査後の講評では、天候の難しかった今年度のお茶の出来について。今後の審査方法の見直しについて。鮮度と保存性の両立する的確な火入れ度合の確認等が話し合われ、組合員立ち合いのもと、今年のお茶に公正な格付けがなされたことを確認して閉会となりました。

地域の景観と文化に一役、古内茶生産組合

 組合は現在何名で組織されているのでしょうか。組合のことや古内茶の特徴などについて教えてください。

組合員 加藤さん
 「組合が組織された50年ほど前は約40名の組合員がいましたが、徐々に減り、私が入った頃には20名位。高齢化と後継者不足により、今現在は8名にまで減っています。ただし作付面積の大きい生産者は継続していますので、組合全体としての収量はさほど減っているわけではありません。地元で愛され地元で消費されてきたお茶ですので、販路は城里町の物産センター山桜、道の駅かつら、エーコープ、ホロルの湯、この4カ所がメイン。他には生産者それぞれに自営の店舗および知り合い等を通じて流通しています。
 組合では5月に採取する一番茶のみを緑茶にしています。従来お茶作りは分業制が主流でしたが、古内茶の場合は栽培から製品化に至るまで生産者が一貫して行っています。栽培技術だけでなく、いくつもの工程がある加工の技術も必要で、たとえ良質なお茶の葉ができても、加工で台無しにしてしまうこともあります。そこがお茶の難しさであり、後継者の育成にも苦労するところです。
 古内茶の特徴については、一概にこうですと言うのは難しい。生産者各自の特徴を生かした作り方をしていますので、今日の審査を見ていただいた通り、それぞれの個性がお茶にも出ているのです。ただ社会全般に今は深蒸しの柔らかめのお茶が好まれています。昔はお茶を飲む際に、茶葉の特性に合わせて、お湯の温度や蒸らす時間を変えて淹れたりしていましたが、今は30秒おいてから淹れてくださいというようなお茶よりも、お湯を注いだらパッと飲める方が良いのでしょう。私たちのお茶も、淹れ方にあまり左右されず、誰が淹れてもおいしいと感じられるお茶という方向で調整をしています」

新たに脚光を浴びる古内茶

 古内茶のルーツでありシンボル的存在である、光圀公ゆかりのお茶「初音」。城里町では、そんな「初音」を現代に蘇らせる活動が地道に続けられています。また地域おこし団体によるユニークな取り組みが実を結び、ここ数年、城里町ではさまざまなイベントが開かれるようになりました。「古内茶庭先カフェ」(*1)や、「初音の収穫」(*2)など、古内茶への関心が寄せられる機会が増えてきましたね。

組合員 加藤さん
 「庭先カフェでのお茶の評判は上々で、これを機会に古内茶をもっと広く知っていただきたいという思いから、組合としてはこれからも町の皆さまと連携し、イベント等にも積極的に参加していこうと考えています」。

城里町地域おこし協力隊 坂本さん
 「品評会の翌週には、関係者一同で初音の収穫を祝う会を行います。古内茶は喉越しが軽くて香りがすっと入ってくると高く評価してくださっているスウェーデン人の日本茶インストラクター、ブレケル・オスカル氏も自ら参加を表明してくださいました。この機会に、また来年に向けて士気を高めていければと思っています」

(*1)「古内茶庭先カフェ」はお茶農家の庭先や神社を開放し、お茶とお茶うけで来場者をおもてなし。参加者は町歩きを楽しみながら好きな会場を訪ね、農家ごとに異なるお茶の味わいを感じながら、自家製の漬物や煮物などが楽しめます。田舎の親戚に遊びにきたような、懐かしくも贅沢なおもてなしが好評を得ています。
◎庭先カフェ参考記事

https://localletter.jp/articles/shirosato_ibaraki/?fbclid=IwAR1imvTvJ48UO-7dbkAIZoNCXbGsIL4P2btOjkzPJNr25z3MRczJ8XMFFGk

(*2)かねてより城里町では、古内茶生産組合や地域おこし協力隊などとの協同により、清音寺境内にたった1本残っている光圀公ゆかりの「初音」の母木から、挿木による増殖栽培を続けてきました。2020年5月25日、2.1aの畑から5.2kgの生葉を初収穫。境内の木を母体とする株だけが許される「初音茶」の名は、古内茶を象徴するスペシャルブランド。今後の活用法が注目されています。

【取材録】

“地元で愛され地元で消費されてきたお茶”ゆえに、途絶えることもなかったけれど、知れ渡ることもなかった古内茶。地方の人と町を活気づけ、新たな雇用を生み出そうという地方創生の観点から、城里町における古内茶は確かな資源のひとつです。好評を博した「古茶内庭先カフェ」などは、仕事の合間にお茶を飲みながらお喋りをする昔ながらの風習、東北弁でいうところの「お茶っこ」そのもの。都市部と地方の情報格差がなくなった現代においては、このゆったりとした「お茶っこ」が、新たなネットワークやアイデアを生み出す場になり得ることも想像に難くありません。リアルな人と人との真ん中に、地元産の食材で作ったお茶うけとおいしいお茶のある風景。「このお茶のはじまりはね…」なんて落語の枕みたいなお話しから始まる、そんなコミュニケーションが茨城らしい魅力だと思うのです。ここ城里町における古内茶の振興活動は、懐かしいけれど新しくて、都会の人ほどつよく惹かれるのではないかと感じました。

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