イメージの脱却。
最近のちんげんさいの動向を眺めていたら、そんな言葉が思い浮かびました。ちんげんさいと聞いて、思いつくイメージで多いのは中華料理、炒める、そのほかには…? 周りに聞いてみても、知識が少ないばかりか、食べ方に広がりがないといったネガティブな答えばかり。もちろんその後に「おいしいんだけどね」との言葉も続きます。ところが最近、ちんげんさいへのイメージが徐々に変わってきているように思えるのです。
あまり知られていないけれど、じつは茨城県でたくさん栽培されているという野菜は数知れず。そのなかのひとつが、ちんげんさいです。県内では行方市での栽培が盛んで、全国有数の栽培地でもあるといいます。恥ずかしながら、私自身も最近になって知った事実。自称・野菜オタクであるにもかかわらず、この無知さはお恥ずかしい限り。行方市そだちのちんげんさいの活躍ぶりを追っていくうちに、私の中でどんどんその存在が大きくなっています。
詳しくは定かではありませんが、今から30年ほど前から栽培が始まりました。当初は露地栽培で、ほんの数名で作り始めたといいます。静岡県や愛知県などの例を参考にして栽培方法の研究を進めるうちに、どんどんと栽培する人も出荷量も増えていきました。現在では施設栽培をメインとし、首都圏を中心に周年出荷をしています。
ちんげんさいといったら、両手を合わせたところにひとつちょうど収まるサイズ。これが一般的ですが、最近では品種改良を行い、小さいサイズで生でも食べられる、サラダちんげんさいも登場。炒めて食べるのが一般的でしたが、アクが少ないので生でもおいしく食べられるのが魅力で、ちんげんさいへの距離もぐっと近づきました。これとは対照的に、なんとも大きな巨大サイズのものも。こちらは、通常のものを栽培方法を変えるこちで、大きくした状態で出荷しています。とはいえ、大きいがゆえに栽培に手間がかかることもあり、なかなか出回らない貴重な存在でもあります。そのほかにも、漬物なんてものも。漬物にするなんて意外な気もしますが、味にクセがない野菜なので、どんな料理にも味にも合うわけです。
最近のお気に入りは、ざく切りにしたちんげんさいと水で戻したドライトマト、そのほか好きな野菜を食べやすい大きさに切ってお鍋に。塩、こしょうをふってふたをしたら弱火でにかけるだけ。蒸し野菜にして、食べるときにオリーブオイルをたらりとかけていただきます。火を加えるとしんなりするので、二人だったらちんげんさい2株なんて、あっという間にぺろり、です。
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