COLUMN 01 未来農業報告書

HOMECOLUMNCOLUMN01 > 農業者の視点で開発した選果機が日本を席捲

みやすい野菜をやさしく選別。シェアを拡大する「イタマーズ」

 NKK(日本協同企画)という聞き慣れない名前は、一見農業とは無縁のように思われますが、農産物の大規模出荷に欠かせない選果機を企画開発している会社です。先行する大手企業を向こうにまわし、農業従事者ならではの発想と工夫で作り上げた選果機は、デリケートで傷みやすい野菜の選別・出荷に各方面から大きな期待が寄せられています。シンプルな機構で低コスト、そのネーミングも「イタマーズ」と極めて分かりやすい選果機。奇をてらうことのない直球の姿勢がうかがえます。

メーカーの発想に違和感が開発の原点

ー「イタマーズ」は宮田社長さん自身が開発したものとお聞きしましたが。

宮田さん 私は20代から農業に従事しましたが、30代前半で農協の役員になり、自前で農協の研究機関を経営したりしていました。その当時、トマト等の品質選別や箱詰めなどにはメーカー製選果機を使っていましたが、選果機を稼働させると農産物の特性により、等階級で受箱のきまったところにだけトマト等が溜まり、箱詰めなどの作業に支障が出来て効率が悪くなります。同時に、トマト等に傷みが発生してしまいました。それまでのメーカーの選果機などでは、キュウリのイボなどが殆ど落ちてしまい、市場で販売できなくなってしまうこともありました。メーカーの発想はどこか間違っているのではと、考えていました。

ーそれまでのメーカー製品では満足できなかったのですね。

宮田さん 最初使いづらさの解消のため、あらゆるメーカーに取り組んでもらいました。でも、どうしても出来ないのです。大手電機メーカーも2億円以上の研究費をつぎ込んだのですが失敗でした。自分の思っているものとどうも違うのです。発想の原点が違いすぎて他産業のメーカーでは開発は不可能である事を悟り、自分でやってみようと思ったのです。

自ら設計に取り組み、販売にも取り組む

 
ー農業から工業製品の設計者になったのですか?
 

宮田​さん 過去に開発した初期のベルト式目視簡易選果機を全国の農協から依頼されて導入を図りましたが、導入後キュウリの生産が急成長して選別段階で人の目で追うことができなくなりました。選果基準の統一が難しくなり、全国的な問題になっていました。その他の選果機も同様でした。このままでは日本の農業はパンクする。そこで、自分でパソコンのCADソフトを使ってカメラ式(画像判定装置)選果機を設計したのです。町工場のおじさんの協力を得て、8カ月かけ作り上げていきました。資金は尽きてしまいそうになり、「何が何でも作らないと破産する…」という状態でした。そうして出来上がったものが「イタマーズ3号」です。

ー完成した選果機が評判を呼んだのですね。
宮田さん 谷和原農協に仮設置し、仲間の生産者に見せたら「これはすごい機械ができた!」とびっくりされました。それで都内の弁理士の先生に頼んで特許を取りました。「だれも考えたことのないことだから特許を取れる」と。そして日本協同企画という社名は最初、笑われましたが、秘書1人を連れて全国の農協からの要請に応えるため、各地を訪問し既存の選果機の問題点を説きました。それまで特定のメーカーの寡占状態でしたが、私どもにも強い導入の意志を示す農協が全国的におこり、弊社選果機の数種類の導入普及が進んで行きました。ほとんど他メーカー製の導入が決まっていたところでも、私たちの「イタマーズシリーズ機種」を知った農協から逆転受注できたことが何度もありました。
 

農業従事者の視点が盛り込まれた選果機

ー「イタマーズ」は一体どこに秘密があるのですか?

宮田さん 内部品質センサー(糖度計)は三井金属製ですが、トマトやイチゴ、キュウリ、ゴーヤ、ミニトマト、ピーマン、栗、桃といったものまでも効率よく選果できる機種を開発しました。トマトや桃などは収穫してしまうと、それ以上は大きくはなりませんが、キュウリなどはどんどん大きくなる。その違いに注目し、丸玉用(トマト桃、柿、リンゴ、マンゴー、ナシ等)と長尺用(胡瓜、茄子、ゴーヤー等)、軽量用(ピーマン、栗等)が開発製品化出来ました。特徴は新思考で考案したため、画期的と言ってよいほどのシンプル機構が実現したことです。故障やメンテ費用が少なく、省力度も大きく、効率の良さが評判になり、新聞で紹介されたことで全国に広がっていきました。

ー細やかな工夫があるのですね。

宮田さん まず、傷みを発生させないこと。また、カメラによる画像判定装置も自前で開発したため、秒4.2個(キュウリ)のスピードで等階級にバラツキがなく瞬時に判定することが出来ます。何よりもシンプルな構造のため、低価格に抑えることが出来ます。稼働維持コストを少なくすることで、生産者の負担が少なく、安心して導入できるシステムにしたのです。

 

あくまで「農業者のために」が基本

ー会社の将来についてはどのようにお考えですか?

宮田さん たった2人で始まった会社でしたが、現在は男性7人女性3人あわせて10名の社員を抱えています。それでも全国に展開しています。私どもはいわば「知的所有権企業」だと思っています。サービス提供会社などを通じて、東日本、西日本はもとより、九州、沖縄を含めた全国にサービス体制を敷いています。

ー全国規模の会社に成長されたのですね。

宮田さん 私はかつて農協運動を通じて、情報や知識の少ない弱い立場にある生産農家の役に立ちたいと、無給で20年も働いたことがあります。地元特産の野菜の種が間違って配布され大問題になったこともありましたが、その問題解決のためにも奔走しました。変わり者のようにみられましたが、基本は同じ状況にある弱い農家に他力本願でなく自ら習得した知恵と努力で自らを守るため、「農家の意地や心意気」を持って行動できるよう啓蒙する事でした。農家は市況に左右され計算できない職業でもあります。それには良いものを作るというのが大切ですね。私どもの特許もやがて時期がくれば特許が切れみんなの財産になります。こんなに簡単で便利な機械であるということを共有できる未来が来るはずです。

 

【取材録】

 NKKの「イタマーズ」を作り上げた宮田社長のバイタリティーには終始圧倒されました。トマトの選果機用引き出しベルトからスタートして、平成14年に「イタマーズ」は生まれました。現在6号機まで進歩して、生産効率の悪い現場でもそれまでの3、4倍といった生産性を上げることに成功した事例もあります。平成18年には茨城県工業技術開発奨励賞、知事賞を受賞するなど、製品には行政のお墨付きももらいました。しかし、NKKの魅力は製品の確かさとともに「農家を助けたい」という志を持ち続ける宮田社長のヒューマニズムです。

■NKK(日本協同企画)
筑西市門井1705
>ホームページ https://nkk-gr.com

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