COLUMN 01 未来農業報告書

HOMECOLUMNCOLUMN01 > 北関東初のローソンファーム誕生、ブナシメジ農家の挑戦

大手企業との連携で販路拡大
新たな事業展開に注目

 涸沼(ひぬま)から車で約20分。畑に囲まれた細い道を走っていると、大きな建物と二つの看板「有限会社鬼澤食菌センター」「株式会社ローソンファーム茨城」が見えてきました。茨城県鉾田市でブナシメジの製造、販売を手掛ける鬼澤食菌センター。ここに2014年2月、北関東で初となるローソンファームが誕生しました。コンビニ大手のローソンと鬼澤食菌センターなどが出資して設立した農業生産法人「ローソンファーム茨城」です。2014年度は新たに150㌧の生産を見込み、関東や東北などのローソングループ店に供給する計画です。大手企業と農家の提携はどのような展開を見せるのでしょうか−。

安心・安全・品質にこだわったブナシメジ

 鬼澤食菌センター(鬼澤洋治社長)は、会社設立の2年前、平成7年からブナシメジ栽培を始めました。それ以前はゴボウを中心に露地野菜を手掛けていましたが、天候に左右されない安定した営農を目指し、ヒラタケを経て現在に至ったといいます。「時代の流れでは柔らかく癖のないキノコが求められていますが、うちのブナシメジは歯触り、固さ、色の良さ、そしてキノコらしいしっかりした味が特徴です」。そう話すのはセンター専務で、ローソンファーム茨城の社長に就いた鬼澤宏さん(45)。「菌床の主原料には県内産のオガ粉を使い、きめ細かな独自の管理手法で安心・安全、品質にこだわった栽培を行っています」

 キノコの中でも一番栽培に時間がかかるというブナシメジ。宏さんに工場を案内してもらいました。まずはオガ粉、水、おからなどを撹拌して培地づくり。続いて、菌床をビンに詰め、殺菌・放冷後、培地にブナシメジ菌を接種します。接種済みのビンはまとめて培養室へ。温度・湿度に注意しながら約90日間、菌を熟成させます。繁殖したら表面を掻いて発生室へ移動。菌の目を覚まさせるように水をかけ、温度・湿度を細かく調整しながら約20日間かけて大きく成長させます。青いLEDに照らされ、どこか神秘的なキノコたち。6段の棚には生育の度合い別に管理されたブナシメジがずらりと並んでいます。照明はデータ管理して時間を変えながら照射しています。湿度は歯応えに影響するため、温度・湿度管理も腕の見せ所。「熟成から発生まで約110日間。生育環境に配慮して、毎日成長の様子を細かく観察していると愛着もわきます」。作業服に身を包んだ宏さんの話ぶりから、ブナシメジへの愛情がひしひしと伝わってきます。

法人設立で6次産業化に光

 母体となるセンターの年間生産量は約350㌧、栽培ボトル換算で174万8500本。秋〜冬が流通のメインで、これまで夏場の生産はほとんど行っていませんでした。しかし、今回の法人設立で新たな販路が生まれ、年間通した生産が可能となりました。夏場の稼働などで、150㌧アップを目指します。さらに、冷凍や乾燥加工といった6次産業への取り組みにも弾みがつきました。「6次産業化の計画は元々挙っていたが、出口の確保という不安とプレッシャーがありました」と宏さん。そこに、法人設立の話が舞い込み、手を組むこととなりました。これまで倉庫として使っていたスペースを改築して乾燥機・冷凍機を導入。ローソンのベンダー工場向けに冷凍業務商品を提供する予定で、惣菜調理用の原料や冷凍カットブナシメジとして利用されます。

「ローソンファーム茨城」設立への道筋、そして今後

 一方のローソンは「生産者の顔が見える青果」を掲げ、全国19カ所でローソン専用農場「ローソンファーム」を展開 (2014年7月時点)。次世代を担う若い営農家の育成、農産物の安定供給、地域の活性化などを狙いに、2015年度末までに40ファームの設立を目標にしています。

 「ローソンファーム茨城」設立の道筋はというと、ローソンからのアプローチでした。生鮮商品担当者が良質なブナジメジを探す中、鬼澤食菌センターにたどり着いたといいます。品質、歯ごたえ、形状ともに最高のブナシメジにほれ込み、ローソングループとの取引検討を開始。2013年5月のことです。
 同年8月。店頭販売のみならず、調理惣菜の材料としての利用も見込んで、経営の可否を検討。十分な採算ベースに乗ると判断して設立に向けて動き出しました。
 そして翌年2月、ローソンファーム初の菌茸工場として「ローソンファーム茨城」が生まれました。これまでのローソンファームは露地野菜栽培が中心で、閉鎖型菌床栽培工場は初めてのこと。それだけに期待も大きく、今後は店頭青果販売のみならず、幅広い商品で「ローソンファーム茨城」のブナシメジを活用する考えです。
 ローソンの前田淳執行役員は「年間通しての安定供給が可能となり、生産量がコントロールできることは大きなメリット。農産物の品質が良く、豊富な生産量を誇る茨城は関東エリアの拠点になると考えている」と、茨城でのファーム拡大に意欲を見せています。

 今後ローソンは、地元農家と連携して茨城県内各地に同様の法人を作っていく予定です。宏さんは「こだわりの商品を多くの人に食べてもらえることは生産者としてうれしい。従業員数も増やす予定なので加工部門を伸ばし、需要に応えて生産量を上げていきたい。茨城の野菜は良いものがたくさんある。農業に携わる一農家として盛り上げていければ」と力を込めます。
 巨大な流通網を持つ企業と、高品質・安心・安全が強みの農家。双方による新たな農業展開に注目が集まっています。

【取材録】

これまでは流通の部分で、年間通しての生産が難しかったというブナシメジ。今回、出口が確保できたことで、生産性向上に加えて加工への新たな展開が生まれました。農林水産業(1次産業)を、加工・製造(2次産業)、販売・流通(3次産業)まで事業を広げて展開する6次産業は、新たなビジネスチャンスや雇用の拡大などが期待される一方、安定した生産、販路の確保が大きな壁となっています。ローソンファーム茨城は、夏場の期間を生産に充てるなどで目標とする生産量を確保し、人材の受け入れ準備も進めていくといいます。「ファームを通じて、茨城のおいしい食材、茨城の魅力を伝えていきたい」。確かな品質にこだわり、愛情たっぷりに育てられている鬼澤ブナシメジが描く農業の一つの形に、可能性を感じました。

■農業生産法人 株式会社ローソンファーム茨城
鉾田市田崎1023
0291-37-1755

>鬼澤食菌センターホームページ

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