COLUMN 01 未来農業報告書

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いばらき営農塾とは?

 平成16年度に開校し、今年(平成26年度)で11年目を迎える「いばらき営農塾(以下、営農塾)」。営農塾には、県内で新規就農しようとしている人、もしくは農業を始めてまだ間もない人を対象とした「営農支援研修」と、定年退職を迎え県内で農業を始めようとしている人を対象とした「定年帰農者等支援研修」があり、講義(座学)と実習を組み合わせた研修で、作物作りの基礎を学ぶことができます。取材日には「営農支援研修」のBコース(野菜入門コース)で受講者懇談会がおこなわれていました。学ぶことだけではなく、同じ志を持つ仲間(ネットワーク)を作る場でもあります。
 懇談会では轟学校長から「これからの農業のキーワードは『マーケティング』と『流通』と言われています。消費者が欲しいものを作り、消費者の手に届くまでの距離を短くすることが大事。他の産業を知っている受講者のみなさんの力を貸して頂きたい。新しい農業のビジネスモデルを作ってもらいたいです」と受講者にメッセージが送られました。この轟学校長の言葉にもある「マーケティング」は、この日の午前中の座学でも取り上げられていました。ちなみに、このマーケティングの授業は去年にはなかったもの。受講者から集めたアンケートの要望に応え、今年から取り入れたそうです。このように、講義の内容も時代に沿って考えられています。
 

 
様々な受講者の、様々な想い

 営農塾には県内の様々な地域から、農業を志す人が集まっています。懇談会では、受講者一人ひとりが受講したきっかけなどを発表していました。「代々受け継がれてきた農地を守りたい」、「今まで何となく農業をやってきたが、基礎から学びたい」と言う農家出身の人がいれば、「知識も経験もないけれど、将来就農しようと思っている」、「農業を絡めた新しい事業を興したい」と言う非農家の人もいます。受講者の方々が、農業に対する熱い想いを胸に抱いてこの営農塾の門戸を潜ってきたのが、言葉の節々から伝わってくる発表でした。

高品質の農作物を作る
 そのような熱心な受講者を指導する講師陣には、個性も経験も豊かな人たちが揃えられています。今回お話を伺ったのは、茨城県職員として水稲の試験研究や農業教育に従事し、退職後にJICA(独立行政法人 国際協力機構)に勤め、アフリカ・タンザニアで農業指導をした経験もある幸田浩俊先生です。
 TPPによる海外の農産物の輸入増加、高齢化社会の影響による後継者不足や耕作放棄地の増加。現在の日本の「農」は、とても難しい問題を抱えています。ですが、幸田先生に言わせると「問題があるのは当たり前なんだ」とのこと。
 幸田先生がタンザニアでの指導を終えて日本に帰ってきた当時も、「問題がある」と日本の農業を取り巻く人々は大騒ぎしていたそうです(当時の日本も、農産物の輸入問題で揺れていました)。
 「日本の自然生産力はすごく高い。水はたっぷりあるし、お日さまはたくさん照るし、土もいい。放っておけば農地はすぐに雑木林に変わってしまうんだよ。この荒ぶる生産力を、除草剤やら農薬やら労働量やらでコントロールしなきゃいけない訳なんだ。従って、日本の農産物が高くなるのは、当たり前のことなんだよ」
 狭い国土の日本が諸外国と安売り競争をしても、負けるのは目に見えています。では、日本の農業が進むべき道は?
 「品質なんだよ。日本人は本質的に質の高いものをきちんと作る。だから、日本の食文化が優れているところを、農業の側から発信できるような状態を作らないと」
 この高品質の農作物を作るという意思は、受講者にもきちんと伝わり、そして実践されています。営農塾の定年帰農者等支援研修には水稲入門コースがあり、ここで教えた受講者たちが作った米の大部分は、サタケの食味計で80(100点満点中)を超える高い食味値を計測しているのです。
 

 
農業は一期一会
 幸田先生が帰国当時、日本の農業政策は、農地集約とコスト削減を掲げていました。しかし、その政策を素直に実行していくと、「残ってしまう人たち」がいます。それは、小規模の農家でした。農政は、農家の大規模化を推進してきたのです。このような時代の流れもあって、幸田先生は、大規模農家を育成する仕事の誘いを受けます。仕事を引き受けてはみたものの、心の中ではわだかまりを抱えていました。
 「小規模農家を支える政策がないと、日本の農業は不味いことになる」
 疑問を抱きながら仕事をしている時に、営農塾の講師の話が舞い込んできました。
 「自分が農業をやって年間5000万円稼ぐよりも、営農塾で1年間に100人に教えて、その人たちが年間50万ずつ稼いでくれた方が、同じ5000万でも茨城県の農業の為になる」
 そのように考えて、幸田先生は営農塾の講師を引き受けました。現実は、その理想に近付きつつあります。営農塾の受講者のうち約6割は、卒業後に就農しているという結果が出ています。営農塾によって、茨城の農業の担い手は確実に育っているのです。
 「食える物を作るのが農業じゃないんだ。農業っていうのは、より品質の良い物を、売れる物を作る。それで初めて農業と呼べる。営農塾は、自分で農業をやって少しでもお金に替えたいと思いっている人が対象なので、そういう想いを持っているのであれば、どんな方でも来てもらいたい。それと、既に就農している人たちには、毎年何か新しいことにチャレンジしてもらいたい。それは新しい作物かもしれないし、新しい作型かもしれないし、新しい技術かもしれない。去年よりも今年の方が良くなった、来年はまた更に良くしようというイメージを、頭の中で作り上げられるような農業を展開してもらえれば、すごく嬉しいな。農業も一期一会なんですよ。同じ作物には二度と出会えないという意味で」
 営農塾を受講し就農した人々は、農業との出会いを一期一会と考えて、大事に育てていったのだと思われます。
 

【取材録】

 一年前。私は取材記者としてではなく、受講者として営農塾の場にいました。私が懇談会で発表した受講理由は、「(農業の)漫画に影響されて」。当時は「農業」の「の」の字も知らなかった私ですが、今では営農塾で得た知識と経験を活かし、仲間に支えられながら、「農業」を生活の糧とし、そして「農業」を書かせていただいております。
 幸田先生の言葉には名言が多く、掲載した言葉の他にも「野菜の言葉がわからないと、農業は難しい」という言葉がありました。野菜の言葉がわかると、収穫適期を野菜が教えてくれるそうです。未だ、私には野菜の言葉が理解できません。いつの日か、理解したいです。

■いばらき営農塾
茨城町長岡4070-186
029-292-0419

ホームページ http://www.pref.ibaraki.jp/nourin/nodai/3einoujyuku/3einoujyuku.html

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