いばらきの生産者

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 茨城県は日本一の干し芋の生産地で、現在、生産量は全国シェア90パーセントを誇ります。特に、太平洋に面したひたちなか市は、ミネラル豊富な肥沃な土、冬場の日照時間、冷たい潮風など、干し芋づくりに適した自然環境を有しています。そのひたちなか市で2020年に干し芋づくりを始めた「二川農園」を訪ね、代表の二川貴一さん、クリエイティブディレクターの柴田康平さんにお話を伺いました。

2020年に始まった、若手生産者が営む農園

−農園を始めるきっかけについて教えてください。

二川さん 地元のひたちなか市で育ち、社会人になってから東海村にある干し芋専門会社で5年間勤務し、栽培、収穫、加工、販売に至る干し芋づくりのノウハウを学びました。飽きっぽい性格で、これまで長続きする仕事はなかったのですが、干し芋の仕事は1年を通していろいろな作業があり、飽きるどころか1年があっという間に過ぎ、充実した日々を実感しました。それで、いつか独立し、おいしい干し芋づくりを極めたいと願うようになりました。

 農園の準備を進めていく中、宣伝や販売、デザインの分野で力になってくれそうな、小・中学校の同級生の柴田康平君に声を掛けました。彼は金融機関に勤務し、退社後は編集やデザインの仕事を経験していたからです。

柴田さん 同窓会で会ったときに干し芋づくりの熱い思いを彼から聞きました。当時東京に住んでいましたが、子供の時から身近にあった干し芋という地元の特産品の仕事に携われることは魅力でしたから、即諾しました。

二川さん 柴田君が一緒に仕事をしてくれることが決まり、力強く感じました。その後、栽培する畑は、ひたちなか市に加え、近隣の大洗や東海村を含め、約2.5ヘクタールを確保しました。必要な設備は、先輩の農家さんからの頂き物や、クラウドファンディングを活用して揃えることができました。こうして本格的に動き出しました。

手間ひまを惜しまず、おいしさを追求する

−干し芋作りでどんなことを大切にしていますか?

二川さん 最初の年に使用した品種は「紅はるか」です。栽培から加工まで、いろいろなところにこだわりました。苗の土を覆う黒いシートのマルチを外すのは通常収穫時ですが、夏場に外しました。暑い時期にこれを行うのは大変なんですが、こうすることでイモに水分を多く含ませることができ、成長がよくなるので収穫量が増えるんです。そして、収穫したイモは、氷点下の寒い環境で貯蔵すると腐ってしまうので、10度以下にならないよう貯蔵庫で温度と湿度に注意を払い、徹底した管理を行います。この過程でデンプン質がショ糖に変わり、甘みが増します(糖化)。その後、洗浄し、蒸し煮をしますが、ここでもひと手間をかけます。洗浄後にすぐに蒸すのではなく、ぬるま湯に30分ほど漬けること、そして、蒸し煮は弱い蒸気で時間をかける、いわゆる低温調理をします。時間と手間はかかりますが、甘みが増すだけではなく、イモ本来の風味が加わり、味に深みが出るんです。その後、熱いうちに皮をむいて、ピアノ線を木枠に張った裁断機でスライスし、網の上に一枚ずつ丁寧に並べ、天日干しをします。

若い世代ならではの視点でアプロ―チ
頼もしい後継者に期待が集まる

−販売の分野ではどのような取り組みをされましたか?

柴田さん 自分たちの農園を知ってもらうため、直売所のほか、オンライン販売を始めました。2021年2月には、60万人フォロワーを持つ人気ユーチューバーにアポイントし、農園に来てもらい、干し芋をほおばるリアルな映像で美味しさやこだわりを伝えてもらう企画を立てました。ユーチューブ動画の反響はかなりありました。今後もSNSを活用し、干し芋のことや、干し芋をおいしく食べる調理法などを紹介していきたいです。

 さらに、新たな取り組みとして、染色クリエイターとして活動している草木染作家「futashiba248(フタシバ)」とコラボして、干し芋を作る際に出る皮(さつまいもの残渣皮)で染色した靴下を制作しました。『futashiba248』さんは、化学染料を使わず、限りある自然を無駄なく使いたいという思いから収穫や加工の際に出る葉や皮などの“農業廃棄物”に着目しています。自然環境に配慮するサステナブルなモノ作りに共感しました。

−うれしい出来事があったと聞きました。

柴田さん 干し芋生産者としてスタートしたばかりですが、さつまいも博主催のコンテストで「FAMERS OF THE YEAR 2020-2021」の賞をいただきました。今年は感染症拡大の影響で、さいたまスーパーアリーナの「さつまいも博」は中止となってしまいましたが、スタッフや関係者の方々のご尽力でオンライン授賞式に参加させていただきました。今後の励みになりました。

−今後の取り組みについて聞かせてください。

二川さん 次年度からはサツマイモの品種を増やし、販路を広げることを考えています。高齢の農家さんたちの中には後継者がいないため閉園するところもあります。地元特産品の文化と価値を守っていくことが若い世代に課せられていると思います。周りからたくさん支えられ、助けられて農園を始めることができました。まだまだこれからですが、先輩たちから学び、地元に少しでも恩返しがしたいと思っています。

【取材録】

おいしい干しいもを作るために何ができるかを日々考え、チャレンジする姿勢に若いエネルギーを感じました。取材時のお話に出てきたユーチューブを観てみました。人気ユーチューバーが農園を訪ね、二川さんや柴田さん、近所の人たちとおしゃべりしながら、干しいもを食べていく動画です。平干しや丸干しのほか、干しいもにバターをのせて軽くトーストするなど、いろいろな調理法で用意された干しいもをおいしそうにほおばる姿を見ていると、なんだか無性に干しいもを食べたくなりました。反響が大きかったとの話に納得です。

二川農園オンラインストア
https://futakawanouen.stores.jp/

二川農園インスタグラム
https://www.instagram.com/futakawanouen/?hl=ja

二川農園YouTube
https://youtu.be/D2brsoBrP88

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