特集

HOMESPECIAL > 震災であらためて気づいた働くよろこび

—『被災地だとか被災者だとか、もうそういうのは止め。津波にのまれた花たちが潮水で葉を枯らしながらも元気に咲いてくれた。僕たちもかならず復活できる。』—
 皆が、まいわい市場への愛着と再開への意気込みを語ってくれた。[写真=スタッフの海老沢さん(中段左)、生産者の松崎誠一さん(中段中)、桜井雄一さん(中段右)、石崎文一さん(下段)]

名もなき英雄たち

 3月11日、大洗の海岸部は地震による津波に襲われました。この町に残された爪痕は深く、大洗まいわい市場も大きな打撃を受けましたが、来たる7月16日、いよいよ大洗リゾートアウトレットと共に再スタートです。津波によって大破した店内を見た時には「正直もうだめかもしれない」と思った常磐さん、田山さんですが、なぜ冒頭のように強い気持ちに変わったのでしょう。
 最初に動き出したのはスタッフでした。「きれいだった職場が津波で酷いことになっているのを、いつまでも見ていられなかった。少しでも早く元に戻したかったんです。」と野菜販売を担当する海老沢さん。市場に野菜を出荷している生産農家も応援に駆けつけ、店舗の瓦礫を撤去しました。本来は休業中ですから、皆ボランティアでの活動です。指示を出さなくても自ら考えて懸命に行動するスタッフの姿に、常磐さん田山さんの方が胸を衝かれました。店の片付けが一段落すると、野菜を移動販売車に積み込み県内外あちこちで販売を始めました。立ち止まるわけにはいかない。再び震災前のまいわい市場を取り戻すんだという思いが、次々と予定を埋めていきました。

 

生産者にとってのまいわい市場

 ここは生産者にとっても他の直売所とはひと味違う存在です。「最初は値段のつけ方もわからなかったが、消費者が使いやすいようにミニレタスを2個1袋にしたり、工夫したくなる気持ちになるんだよね」と主にレタスとトマトを作る石崎さん。メロン作りにかける櫻井さんからは「地震のあと思ったけれど、仕事ができるって楽しい。ここはスタッフがいつも一生懸命で、自分も頑張りたくなるんです」という言葉が。アスパラガスや人参を作っている小松崎さんは「再開の時期に合わせて良いものが採れるように作付けしている。おすすめの料理法とか商品のPRカードなどを作ってくれたり、売れるようにいろいろと手をかけてくれるので助かる」と語ってくれました。皆さん口々に、スタッフとの距離が近いと語り、7月16日のオープンを心待ちにしています。

 

生産者と消費者に誠実に向き合う

 書類関係もすべて水没してしまいましたが、月が変わって4月、まいわい市場は生産者各位に問い合わせ、データが消失した分の野菜の売上金を支払うことにしました。生産者から届くファクスには「まいわいの復活は私たちの原動力です!!」「明日からの農作業に力が入ります!!」「7月のオープンに向けてたくさんの野菜作ります!!」と、「!」がいっぱい!!!
 今後茨城産の食品を扱うにあたり、放射能汚染についての正しい知識を持つことは不可欠。オープン前にはスタッフと生産者を対象とした講演会を企画しています。秋には消費者に向けても同様に開催し、この問題にも真摯に臨もうとしています。
 生産者らから激励や再開への熱い気持ちのこもったファックスが市場に届いた。このファックスの文面が、「何にもかえがたい力となった」とスタッフは語る。

 

出番を作る場所

 「震災後3日間くらい何もできない時がありました。その時、ここで働く時間が幸せだったと痛感した。早くまた農家の皆さんに色々と教えてもらいながら、自分も成長していきたい」と、スタッフの海老沢さん。生産者の皆さんを含めまいわい市場の関係者、誰にどんな質問を投げかけても、その言葉にはお互いを尊重する気持ちと連帯感がにじんでいます。そして早く元通りに働きたいという思いが体を突き動かしているのが伝わってきます。

 気持ちが動いて手が動く人は周囲を巻き込んでいきます。そういう波動は伝わるもので、理屈抜きに周りも動かします。これは意図して作れる繋がりではないだけに貴重な環境。特に昔からのしがらみの多い地方において、こんなこと言ったら嫌われる、目立つことしたら叩かれる、そんな足かせを払拭する母体作りがここなら可能かもしれません。これこそ茨城に必要なムーヴメント。大洗まいわい市場の新しい門出に期待しています!

 

◎まいわい市場の生産者からメッセージ 

石崎文一さんと奥様(鉾田市)
レタス、トマト等を出品。
「7月16日からまたおいしいレタス並べます。まいわい市場は特別なところ。おいしい野菜、買いにきてください」

松崎誠一さん(鉾田市)
メロン、アスパラガス等を出品。
「まいわい市場は楽しい場所です。お客さんまで近い距離だし、スタッフとのコミュニケーションも最高です!お待ちしています。」

桜井雄一さん(鉾田市)
メロン等を出品。
「まいわい市場は僕にとってとても大事。作ったり、売ったりすることの大事な何かを感じることができる。みなさんぜひいらしてください」

【取材録】

■大洗まいわい市場
茨城県東茨城郡大洗町港中央11-2 大洗リゾートアウトレット内1階 TEL.029-266-1147

ページの先頭へ

手軽にプロモーションサイトを作る

特集

子どもたちの未来に、背景ごと美しい食の文化を
Vol.23|美食材の街 匠の会
DATE 2023.06.01
地域に受け継がれる伝統野菜「里川カボチャ」
|Vol.22|ポットラックフィールド里美
DATE 2023.03.09
由緒正しき水戸のお茶、古内茶のいま
|Vol.21|古内茶
DATE 2020.07.03
「割烹こねぎ」で次のステージへ
|Vol.20|栗原農園
DATE 2019.09.09

> 過去の情報 

未来農業報告書

いばらき野菜地図

食と農のデザイン